紫陽花の君は?1
連日の雨にうんざりしていた休日の朝。
キッチンでコーヒーを淹れながら窓の外を眺めると、細かな雨粒がガラスを伝って流れていく。
「はぁ……」
無意識にため息が漏れた。出かける気力も湧かず、今日は映画でも見て過ごすかとマグカップを手にソファへ腰を下ろす。
ちょうどテレビのリモコンに手を伸ばした瞬間、スマホが軽い音を立てた。
画面には友人からのメッセージ。
「雨だけどちょっと出かけないか?」
「雨だぞ?濡れるのは遠慮したいね」と返すと、すぐに「そんなつれないこと言うなよ」と返ってくる。
苦笑しながら「どこへ行くつもりやねん?」と送ると、「お前のカメラの腕を頼りにしてるんだよ」
と続いた。
「いや、雨でカメラ出すのヤダぞ」と返すと、
「雨で濡れた紫陽花の写真がどうしても欲しいんだよ
スマホじゃうまく撮れなくてさ」
と、妙に食い下がってくる。
「でも、それで俺が行く理由にはならねぇだろ?」と返すと、少し間を置いてから
「ごめんごめん、自信ないなら断ってくれてもええねん」
と送られてきた。
「誰も自信ないとは言ってねぇだろ?」と舌打ち混じりに返すと、「いやいや、無理言って悪かったな 」と、さらにイラッとする返事。
気づけば「今から迎えに来い。行くぞ」と送っていた。
「よしきた、あと五分で着くぞ。準備しとけ 」
画面にそう表示された瞬間、「あ、はめられた」と思ったがもう遅い。
急いで上着を羽織り、カメラとレインカバーをバッグに詰め込む。
「着いたぜ、待ってるぞ」
というメッセージを確認し、鍵を閉めて雨の中へ足を踏み出した。




