祭りのあの子2
本堂の縁側に腰を下ろして休んでいると、ふいに横に、見たことのない子がちょこんと座った。
「君、どっから来たん?」
人懐っこい笑顔で話しかけてきたその子は、自分と同じくらいの年で、藍色の浴衣がよく似合う男の子だった。
「僕? 市内からやで」
そう答えると、彼は目を丸くして、
「めっちゃ都会やん、ええなぁ」
と羨ましそうに言った。
照れながら、
「こっちも海が綺麗やし、ええやんか」
と返すと、彼は嬉しそうに笑った。
それからは、他愛もない話をしながら、気づけばすっかり仲良くなっていた。
しばらくして、彼がふいに紙袋を差し出してきた。
「これ、あげるよ」
「ありがとう」
そう言って受け取ると、自分も何か返したくなってポケットを探る。
すると、昼間に祖父と行った砂浜で拾った綺麗な貝殻が出てきた。
「これ、お礼」
差し出すと、彼は嬉しそうに受け取ってくれた。
お互いに笑い合っていると、境内の向こうから母の声が聞こえた。
「○○ー、帰るわよー」
「はーい」
返事をして、
「またね」
と声をかけようと振り向いた。
……そこには、誰もいなかった。
「えっ?」
思わず声が漏れたところに、 両親が歩いてきて、
「どうしたの?」
と不思議そうに聞いてくる。
「今さっきまで、ここに男の子がいて……仲良くなったんだけど……」
そう言っても、そこには誰の姿もなかった。
自分の手にある紙袋を見た祖母が、
「何を持ってるの?」
と覗き込む。
袋の中には、湯気を立てたたい焼きがひとつ、ぽつんと入っていた。
家に戻ってから、今日の出来事を祖父母に話すと、祖父が静かに言った。
「そのたい焼きは食べずに、お供えしようか。
明日、新しいのを買ってやるから」
優しい声だったけれど、なぜか逆らえない気持ちがあった。
「……わかった」
たい焼きの匂いだけが、妙に甘く残っていた…




