祭りのあの子1
夏休みの真ん中あたり、お盆の時期になると、決まって親の実家へ帰省していた。
田んぼが続く道を車で走っていくと、窓の外の景色がだんだん都会の色から、ゆっくりと夏の匂いのする田舎の色に変わっていく。
祖父母に会えるのは嬉しかったけれど、子どもの自分にとっては、昼間は少し退屈だった。
遊ぶ友達もいないし、外は蝉の声がうるさいほどで、結局、昼間は祖父母の家の涼しい部屋でテレビを見たり、ぼんやりしたりして過ごしていた。
それでも夜になると、少しだけ楽しみがあった。
両親と祖父母に連れられて向かう、お寺で開かれる盆踊りの夜店だ。
提灯の灯りがゆらゆら揺れて、遠くから太鼓の音が聞こえてくる。
あの時間だけは、田舎の夜が少しだけ賑やかになる。
お寺の表門に着くと、その前には所狭しと屋台が並んでいて、提灯の明かりがゆらゆら揺れていた。
綿あめの甘い匂いと、焼きそばの香りが混ざって、子どもの自分はそれだけで胸が弾んだ。
「くじ引きやりたい!」
父親の袖を引っ張って言うと、父は苦笑しながら「先に盆踊りや」とだけ言った。
ぶーたれながらも、結局はそのままついていく。
境内に入ると、真ん中に大きな櫓が組まれていて、太鼓の音がドン、ドン、とゆっくり響いていた。
周りでは浴衣姿の大人たちが輪になって踊っていて、その中に混ざって見よう見まねで手を動かす。
しばらく踊っていると、さすがに疲れてきて、近くにいた母に声をかけた。
「疲れたから休憩していい?」
母はうちわで顔をあおぎながら、
「境内から出ないでね。 ほら、あそこの本堂のところで座ってなさい」
と優しく言った。
言われた通り、本堂の縁側のあたりに向かって歩きながら、遠くで続く太鼓の音を聞いていた。




