休日のドライブ撮影
休日の朝、カーテンを開けると澄んだ青空が広がっていた。
窓から差し込む陽の光はやわらかく、肌に触れるだけで少し気持ちがほどけていく。
せっかくの休みだし、カメラでも持ってどこかへ撮影に出かけようか。
そんなことをぼんやり考えながら、いつものように朝食を用意する。
パンをトースターに入れ、湯気の立つ紅茶にいちごジャムをひとさじ。
混ぜるたび、果物とお茶の香りがふわりと立ち上がり、部屋の空気が少し甘くなる。
食器を片付け、軽い上着を羽織って外へ出る。
車に乗り込みエンジンをかけると、今日はのんびりした曲がいい気分で、ジャズアレンジのプレイリストを選んだ。
行き先は決めない。
ただ、気の向くままに車を走らせる。
青空の下、ゆっくりと始まる休日のドライブが、それだけで少し特別に思えた。
車をゆっくり走らせながら、ふと思い出す。
そういえば、隣の市にあるあの神社は山の上から街を一望できたはずだ。
今日は雲ひとつない晴天だし、あそこで撮影するのも悪くない。
そう決めてハンドルを切る。
ジャズアレンジの軽いリズムが車内に流れ、休日の朝らしいゆったりした空気が広がる。
神社の駐車場に車を停め、カメラを手に取る。
鳥居の前で軽く頭を下げて境内へ入ると、朝の光が木々の間を抜けて、砂利道に細い影を落としていた。
本殿に参拝を済ませ、裏手の山道へ向かう。
狭い石段を一段ずつ踏みしめながら登っていくと、視界がぱっと開ける場所に出た。
街が一望できる、あの見晴らしの良い場所だ。
今日は珍しく、参拝者は自分ひとりだけだった。
静かな風が通り抜けていく。
とりあえずカメラを構えて、街を見下ろしながらシャッターを切り始めた。
けれど、なかなか思うような一枚が撮れない。
カシャッ。
確認して、首を傾げる。
設定をいじる。
またカシャッ。
レンズを変えて、角度を変えて、光の入り方を変えて
ようやく「これだ」と思える一枚が撮れた。
思わずフフンっと満足げに笑って、その勢いのまま何枚か続けて撮る。
気が済んだところでカメラをしまい、石段を下り始めた。
鳥居をくぐった瞬間、ぐぅ、と腹が鳴る。
「そんな時間か」と苦笑しながら車に戻り、近くの行きつけの定食屋へ向かった。
唐揚げ定食を注文し、料理が来るまでの間にさっきの写真を確認する。
光の具合もいい。
街の輪郭も綺麗に出てる。
満足のいく出来だ。
最後の何枚かは、確認せずに連続で撮ったやつだ。
その中の一枚を開いた瞬間、手が止まった。
画面の端に、巫女さんがピースをして写っている。
あれ?
今日、参拝者は俺ひとりだったはずだ。
本殿にも、山の上にも、誰もいなかった。
なのに…
カメラの中の彼女は、まるでずっとそこにいたみたいに、自然な笑顔でピースをしていた。
しかし、巫女さんは、俺のカメラ目線じゃなかった。
俺の後ろを見て笑っていた。




