ゲレンデ帰りに5
車に乗せて事情を改めて聞いてみると、どうやら彼女も同じゲレンデで滑っていたらしい。
荷物の大半はバスに積んだまま、温泉に寄っている間にスマホが鳴っていたのに気づかず、そのまま最終便を逃したという。
荷物は目的地のバス会社で預かってもらえるらしく、
そこまで行けばなんとかなるらしい。
とりあえず、地元のバス会社の最寄り駅まで送ることにした。
車を走らせながら、他愛ない話をする。
旅は道連れとはよく言ったもので、知らない誰かと話しながら帰るのも悪くない。
普段はひとりで黙って帰る道のりが、今日は妙に賑やかだった。
高速に乗る頃には、彼女も少し落ち着いたようで、窓の外を眺めながら笑っていた。
地元の駅の近くに差し掛かったとき、「ここで大丈夫です」と言われたので、近くのコンビニの前で車を停めた。
「ありがとうございました。
帰って来れて助かりました」
そう言って、軽く頭を下げて歩いていった。
その後ろ姿はどこか儚げだった。
いいことしたな。
そう思いながら、腹も減ったし飯でも食って帰るかと、近くの定食屋へ向かった。
味噌汁をすすりながら、店内のテレビに目を向ける。
ちょうど交通事故のニュースをやっていた。
温泉街で、歩行者が車に接触し、死亡が確認されたらしい。
「残念なことやな……」
そう思いながら味噌汁をもう一口飲んだとき、テレビのテロップに目が止まった…
〇〇□□さん(22)。
さっき、助手席で「ありがとうございました」と頭を下げていたとき、
彼女が名乗った名前と同じだった。
箸を持つ手が止まる。
えっ……?
じゃあ、俺は誰を乗せて帰ったんや…
胸の奥が、ゆっくりと冷えていくような感覚だけが残った…




