ゲレンデ帰りに4
「帰り道は、少し体を温めてからにするか」
そう思いながら、ゲレンデの駐車場を後にした。
近くに温泉があるのは知っていたし、冷えた体をほぐすにはちょうどいい。
帰る方向とは逆にハンドルを切りながら、今日の滑りを思い返す。
楽しかったな。
もう少し体力つけるか。
そんなことを考えているうちに、温泉街の看板が見えてきた。
車を停めて外に出ると、ゲレンデとは違う、湿った温かい空気がふわっと肌に触れた。
着替えを持って温泉へ向かい、湯に浸かった瞬間、全身の力が抜けていく。
「はぁ〜……」
思わず声が漏れる。
湯の温度がちょうどよくて、疲れがそのまま溶けていくようだった。
のんびりと温泉を堪能し、体も心も軽くなったところで施設を出る。
外の空気は冷たいけれど、体の芯が温まっているせいか、自然と顔が緩んだ。
駐車場へ向かって歩いていると、ひとりの若い女の子が、ぽつんと立ち尽くしているのが目に入った。
街灯の下で、ただ呆然と立っている。
(どうしたんだろうな……)
そう思いながら自分の車へ向かうと、その子がこちらに気づいたらしく、小走りで近づいてきた。
「えっ?」
思わず足を止める。
「すみません……どちら方面に帰られますか?」
急な問いかけに、反射的に答えてしまう。
「えっと……◯◯方面ですけど……」
よく見ると、女の子は肩を震わせ、涙目でこちらを見ていた。
「どうしたんですか?」
そう聞くと、言葉を詰まらせながら説明してくれた。
バスの時間を勘違いして乗り遅れたこと。
バス会社に確認したら、さっき出た便が最終だったこと。
泊まるお金もないこと。
話しながら、何度も唇を噛んでいた。
見捨てるのも気が引ける。
かといって、知らない子を乗せるのもどうなんだろう。
そんな迷いが頭の中をぐるぐる回る。
すると、女の子が小さな声で言った。
「……良かったら、最寄りの駅でもいいので……
乗せていただけませんか……?」
目的地を聞くと、まさかの地元だった。
帰り道も同じだ。
普段なら絶対に乗せない。
でも、このままここに置いていくのも……
さすがに気が引ける。
(ここで放り出して、もし何かあったら……
それこそ目覚めが悪いよな)
そう思い、乗せて帰ることにした。




