ゲレンデ帰りに2
「おぅ、おはよう。寝坊せずちゃんと来たな」
センターハウス前に着くと、先輩がいつもの調子で笑いながら俺の肩を軽く叩いた。
朝の冷たい空気の中でも、その手の温度だけは妙にしっかりしている。
「おはようございます。もちろんですよ、楽しみでしたし」
そう返すと、先輩は鼻で笑ってから言った。
「もう1人来るはずなんやけどな。まだ着いてないわ。
先に滑っとくぞ。あいつの遅刻癖には困ったもんや」
どうやら後輩が遅れているらしい。
まあ、あいつならあり得るなと思いながら、
「そうですね。せっかくいい感じのコンディションですし、何本か行きましょー」
と返す。
ふたりでリフト券を購入し、板を片手にリフト乗り場へ向かう。
朝のゲレンデは空気が澄んでいて、雪面が太陽の光を細かく跳ね返していた。
リフトに乗ると、足元で板がゆらゆら揺れて、風が頬を切るように通り抜けていく。
先輩はリフトの上でも相変わらず喋りっぱなしだった。
リフトを片足でスーッと滑り降り、安全な着脱スペースまで移動してビンディングを固定する。
カチッと音がして、足元がしっかり板と一体になる。
準備が整って先輩を見ると、スマホをいじっていた。
こちらに気づいた先輩が顔を上げる。
「おぅ、あいつ今着いたらしいわ。サクッと降りるぞ」
「1本目から本気でいいんですか?」
笑いながらそう言うと、先輩はニヤッと笑って、
「待たせるのも可哀想やろ」
と言いながら、雪面に向かって勢いよく滑り出した。
置いていかれないように、俺もターンを刻みながら追いかける。
ザリザリとエッジが雪を削る音が心地いい。
朝の冷たい空気を切り裂くように、ふたりで一直線にゲレンデを降りていく。
そんなやり取りをしながら、後輩が待つ正面リフト下まで滑り降りた。




