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四本の木5

黙って、なぜこの配置なんだ?

その疑問だけが頭に浮かんだ。

門に柊は分かる。

昔から“悪いものを家に入れない”という考えがある。

それは自然だ。

だが……

玄関前の西側に香りの強い沈丁花。

中庭の北から少し東側に柚子の木。

そして道沿いの川べりに古いしだれ柳。

なぜ、この組み合わせなんだろう。

友人夫婦は、黙り込んだ俺を見て不安になったのか、

「ど、どうだ?」

と声をかけてきた。

「うーん……庭木を触るなってのは、なんかあるよな……」

そう思いながらも、はっきりした答えは出ない。

「わからんなぁ。とりあえず庭木、見ていい?」

そう言うと、彼はすぐに立ち上がった。

「ええぞ。俺も気になるし、一緒に行くわ」

興味が勝っているのが分かる。

庭に出るためのクロックスを借りて、まず柚子の木に近づく。

相変わらず、爽やかで甘い香りがする。

冬の木らしい、澄んだ香りだ。

そういえば、柚子には魔除けの意味もあったな…

そんなことを思いながら眺めていると、枝の上から柚子の実がひとつ、ぽとりと落ちてきた。

反射的に手を伸ばして掴み取る。

「ナイスキャッチ」

隣で彼が笑う。

「実が落ちてくるなんて、気に入られてんのか?」

そう言って肩を叩いてくる。

でも、風もなかった。枝も揺れていない。

それなのに香りだけが強くなった気がした。

「それなら歓迎の印として、丁寧に受け取らなあかんな」

軽く拳をコツンと彼の胸に当てつつ、不思議に思いながら居間へ戻った。

こたつの上に柚子の実を置き、俺は自分なりに考えをまとめるように、ゆっくりと言葉を選んだ。

「これは…庭木をいじるのは…理由はよくわからんなぁ…けど、触らん方がええと思うわ…」

二人が息をのむ。

「手入れにお金がかかっても、ちゃんとした方がいい。 柚子の木は立派やし……前のオーナーさんがご高齢なら、意味があったんやと思う。南西の沈丁花は春先に香る木やし、家の中がええ匂いになるやろ」

そう言って笑う。

「何より、前のオーナーさんが長い間大切にしてきたものを受け継いだと思って、大事にすればええんちゃうか。そうすれば、家内安全で過ごせると思うで」

俺は笑いながらも、胸の奥に小さな引っかかりが残っていた。

友人夫婦は顔を見合わせて笑った。

「それもそうだな。事故物件とかなら嫌だけど、そういう意味なら悪くないな」

「冬は爽やかな香りが入ってくるし、春は甘い香りなら……お香いらないね」

二人とも、すっかり安心したようだった。

帰り際、彼が玄関で柚子の実を手渡してくれた。

「せっかくだから、持って帰れよ」

「ありがとう」

そう言って受け取る。


「また来いよ」


手を振る彼に軽く会釈して門を出ようとした時に、柊の葉が袖に引っかかった。

まるで…返したくないように…

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