帰ってきたのは?
スマホの「ピピピ」というアラームで目が覚めた。
時間を見ると、まだ朝の五時半。
眠気の残る目をこすりながら部屋の電気をつけると、
白い光がゆっくりと視界に広がった。
うーん、と背伸びをして布団から這い出ると、ひやりとした空気が肌に触れ、思わず肩が震える。
気合を入れて布団を畳み、寒さに負けないよう手早く着替えを済ませた。
カーテンを開けると、外はまだ夜の名残が濃い。
遠くの街灯がぽつぽつと灯っていて、静かな街の輪郭だけがぼんやりと浮かんでいる。
スマホを手に取り、今日の予定を確認しながら、上着と鞄、ネックウォーマーを玄関に置いた。
いつもの朝のルーティンが、まだ眠っている家の空気の中に淡々と積み重なっていく。
洗面所へ向かい、冷たい水で顔を洗う。
その冷たさが、嫌でも頭をしゃっきりさせてくれた。
玄関に置いていたネックウォーマーを巻き、
上着を羽織ってからオープンイヤーのワイヤレスイヤホンを耳にかける。
鞄を片手に玄関を出ると、外の空気は思ったより冷たかった。
いつもの音楽のプレイリストを流しながら、
バス停までの道をゆっくり歩く。
空はまだ暗いけれど、東のほうだけが薄い水色に滲み始めていて、その上に月がまだくっきりと浮かんでいた。
「今日も綺麗に見えるな」
そんなことを思いながら歩く。
バス停には、いつもより少し早く着いた。
スマホを取り出してSNSを開くと、以前、怖い話を聞かせてくれた友人からメッセージが届いていた。
内容は、
「不思議な話を思い出したので送ります」
朝の静けさの中で、その一文だけがぽつんと画面に浮かんでいた。
おや?
そう思いながら画面を下にスクロールすると、メッセージの下に一枚の画像が貼られていた。
そこには、こう書かれていた。
うちの家は玄関が開くとガラガラ〜と音がするタイプの玄関で、誰か帰ってきたり入ってきたりすると自分がよく玄関に行って確認してました。
夜ご飯を母、兄、自分で食べていると玄関の開く音がしました。
お父さん帰ってきたーと思って玄関に走って行くと誰もいなければ玄関も開いていませんでした。 誰が帰ってきたんでしょうね。
えっ……?
思わず声が漏れた。
「これ、何が帰ってきたんやろう……」
そう思った瞬間、さっきまで残っていた眠気が一気に吹き飛んだ。
でも、送ってきた本人は元気そうだし、深刻な感じでもない。
「まぁ、また会った時にでも詳しく聞いてみるか」
そう独り言を呟きながら朝日が差し始めたバス停でスマホを握り直した。




