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猫の声後日譚
その日は一旦、解散になった。
彼女は子猫を抱えたまま夜間の動物病院へ向かい、俺も手早く着替えて家へ戻ることにした。
車に乗り込んだ途端、くしゃみと涙が止まらなくなる。
アレルギーが強く出たらしい。
急いでコンビニに寄って顔と鼻を洗い、そのまま帰宅して風呂で全身を洗い流す。
ようやく症状は落ち着いたが、明日は俺も病院行きだな……と苦笑いする。
湯船に浸かりながら、ふと考える。
あの子猫は、どこから入った?
そして、あの“案内するような”爪の音は何だった?
通風口は通れない。
屋根裏にも痕跡はない。
なのに、あんな奥で倒れていた。
そして俺を導くように、頭上を移動していた“何か”。
考え込もうとしたその時、スマホが震えた。
『あの子猫、一命を取り留めたぞ』
彼からのメッセージだった。
胸の奥がじんわりと温かくなる。
助かった
それだけで十分だ。
けれど、あの夜の“案内役”の正体だけは、まだ闇の中に残ったままだった。




