猫の声9
スマホのアラームで目が覚める。
時間を見ると、21時を少し回ったところだった。
「寝すぎたな……」
電気をつけて大きく伸びをする。
布団を片付け、先にシャワーを浴びて頭をすっきりさせる。
湯上がりの身体にコーヒーを流し込みながら、ゆっくりと意識を覚醒させた。
上着を羽織り、車に乗り込む。
エンジンをかけ、落ち着いたクラシックを流しながらゆっくりと車を発進させた。
まだ時間には余裕がある。
途中のコンビニに寄り、おにぎりとお茶を買って車内で軽く済ませる。
時計を確認しながら、彼にメッセージを送った。
『今向かってるけど、どんな感じ?』
すぐに返信が来る。
『いつでもいいぞ。俺も彼女も風呂も終わってるし、飯も終わってるよ』
『わかった。今◯◯のコンビニにいるから、あと30分くらいかな』
そう返して、再び車を走らせた。
家の近くのコインパーキングに車を停め、夜の冷たい空気を吸い込みながら歩き出す。
静かな住宅街の中、彼女の家の前に立ち、インターホンを押した。
ピンポーン。
奥からバタバタと足音が近づき、扉が開く。
「おぅ、お待たせ」
彼が顔を出した。
少し緊張したような、でもどこか安心したような表情だ。
「すまんな。彼女も奥にいるよ」
その声の奥に、“やっと来てくれた”という安堵が混じっていた。
昼と同じようにリビングに通される。
照明は落ち着いた暖色で、部屋はきちんと片付いている。
彼女はラフな部屋着だが、昼より少し表情が曇っていて、こちらを見ると無理に笑おうとしているのが分かった。
「こんばんは」と軽く挨拶を交わし、席に座る。
とりあえず他愛ない会話を始めた。
馴れ初めの話や、どっちから告白したのか、そんな軽い話題。
ふたりとも笑ってはいるが、どこか落ち着かない。
特に彼女は、会話の合間にチラチラと時計を見ていた。
二十四時が近づくにつれ、部屋の空気がじわりと重くなる。
そして、ふっと会話が途切れた瞬間、リビングがしん、と音を失った。
まるで、何かを待つように。




