猫の声8
「お疲れ様です、休日にすみません。少しお知恵をお借りできないですか?」
そうメッセージを送ると、数秒も経たずにスマホが鳴った。
電話だ。
「おぅ、お疲れ様。珍しいやん、どしたんや?」
いつも通りの気さくな声に、少しだけ肩の力が抜ける。
「お疲れ様です。実は、ちょっと不思議な話を聞いてて……家にまつわることなんで、お知恵を貸してもらえないかと思いまして」
「おぅ? なんや、水漏れでもあったんか?」
「いや、そういう感じでもないんですけど……」
そう前置きしてから、彼女の家で聞いた話を簡潔に説明した。
電話の向こうで、相手が「ふむ」と息をつく。
「そらな、洗面所か台所に床下収納のとこあるやろ。あれ開けたら下覗けるぞ。そのタイプの家なら、ほぼそこからしか入れんしな。基礎の感じからして、お前でも入れると思うぞ」
「なるほど……」
言われて思い返すと、確かに洗面所と台所の床に、四角い線が入っていた。
あれが床下収納か。
外し方を丁寧に教えてもらいながら、メモを取る。
メーカーごとの外し方が書かれたURLまで送ってくれた。
「ありがとうございます」
礼を言うと、相手は笑いながら言った。
「結果だけ教えてや。気になるわ」
「わかりました。分かったら連絡しますね」
そう言って電話を切った。
すぐに彼へメッセージを送る。
『今教えてもらった場所に収納とかないか確認して。もしあるなら、中身どっか避けといて』
数分後、短い返信が届く。
『わかったわ』
とりあえず、やるべき準備は見えてきた。
ペンライト。
ヘッドライト。
汚れてもいい服。
順番に揃えていくと、少しずつ気持ちが“夜に向けて”切り替わっていく。
時計を見ると、まだ時間はたっぷりある。
今のうちに体力を整えておく方がいい。
ベッドに横になりながら、ぼんやりと天井を見つめる。
鳴き声は、24時前後。
その時間に、俺はあの家にいる。
そう思うと、胸の奥がじわりと熱くなるような、不思議な緊張があった。
「……少し寝とくか」
そう呟いて、ゆっくりと目を閉じた。




