猫の声2
車の助手席に乗り込むと、彼がちらりとこちらを見て笑った。
「おはよう。迎えに来てくれてありがとう」
そう言うと、彼はニヤリと口角を上げる。
「いや、俺から誘ったからな。休日の朝から逆にすまん。あと場所の説明が面倒でな。迎えに来た方が楽やろ?」
車内では、彼の好きなテンポの速い洋楽が控えめに流れている。
相変わらず趣味のいいやつだ。
「助かるからいいけど、とりあえず車出して。家の前に長居してると怒られるからさ」
「おぅ、すまんすまん」
そう言って、彼はゆっくりと車を発進させた。
しばらく走ってから、運転席の横顔に声をかける。
「ところで相談ってどうしたん? 迎えに来るってことは、それなりの相談やろ? 彼女と喧嘩でもしたか?」
彼は吹き出すように笑った。
「彼女と喧嘩したなら、お前じゃなくて本人と話し合いするわ。だいたい彼女おらんお前になんの相談すんねん」
「おいおい、失礼なやつやな」
こちらも笑いながら返すと、彼は少し真面目な声で言った。
「実はな、今向かってるのは彼女の家なんや。相談内容は着いてからでええか?」
「まぁ、本人も含めて聞いた方が確実やろしな。ええぞ」
そこから三十分ほど、仕事の愚痴や近況を言い合いながら車は進んでいく。
ふと尿意を思い出し、前方のコンビニを指さした。
「悪い、ちょっとトイレ行きたいから寄ってや」
「了解」
車を停めてもらい、トイレを済ませる。
そのままレジへ向かい、レジ奥の棚に並んでいるギフト用のお菓子に目が留まった。
「あの、すみません。そこのクッキーの詰め合わせ、ひとつお願いします」
店員さんに声をかけると、奥から箱を取り出してくれた。
会計を済ませて店を出る。
車に戻ると、彼が呆れたように笑った。
「相変わらずそんなの買うとか、気遣いするやっちゃな。こっちが気を使うわ」
「いやいや、お前、手土産もなしに休日の朝イチ行くんやろ? さすがに俺が気を使うわ」
そんなやり取りをしながら笑い合い、再び車は走り出す。
そして数分後、目的地に到着した。




