猫の声1
休日の朝に、ふと目が覚めた。
連日の残業で身体が重く、昨夜は晩飯を食べて風呂に入ったところまでは覚えているのに、布団に入ってからの記憶がすっぽり抜けている。
時計を見ると、まだ六時を少し過ぎたところだった。
普段なら絶対に起きない時間だ。
もう一眠りしようか……そう思いながら枕元のスマホを見ると、通知ランプが小さく点滅していた。
寝ぼけた頭でロックを解除すると、友人からのメッセージが一件。
送られた時間は、ちょうど自分が寝落ちした直後だった。
「夜遅くに悪いな、ちょっと相談乗ってくれないか? 寝てるなら起きたら何時でもいいから連絡してくれ」
何の相談だろう。
とりあえず「おはよう、ごめん、昨日は寝落ちてたよ。ところでどうしたん?」と返す。
布団から出ると、部屋の空気が思った以上に冷たくて、肩がひゅっとすくんだ。
戻りたい気持ちを抑えつつ布団を畳み、部屋の端に寄せる。
手早く着替えてカーテンを開けると、外はまだ夜の名残を引きずったままの青黒い空が広がっていた。
スマホを片手にキッチンへ向かい、コーヒーを淹れる準備をする。
トースターにパンを放り込み、湯気の立つコーヒーを一口すすったところで、スマホが軽く鳴った。
「おはよう、いや、こちらこそごめんやで。今日の予定どうかな?」
「空いてるぞ。どこで待ち合わせする?」
送るとすぐ既読がつき、返事が来た。
「家まで迎えに行くよ。その感じなら朝飯は今食ってるやろし、八時に家の前でどう?」
「いいよ。早く着いたら連絡してくれたらいいよ」
焼けたトーストにバターを塗り、手早く食べ終える。
食器を洗い、顔を洗って鏡の前で軽く身だしなみを整える。
時計を見ると、もう待ち合わせの二十分前だった。
上着を羽織って外に出ると、冷たい空気が頬を刺した。
鍵を閉めて振り返ると、ちょうど家の前に車が滑り込んでくるところだった。
フロントガラス越しに友人がこちらに気づき、軽く手を振っている。
休日の朝にしては珍しく、やけにスムーズに始まった一日。
相談の内容はまだ聞いていないけれど、こういう静かな朝に友人と出かけるのも悪くない。




