平日のお休みに6
少しコーヒーを飲んでから、彼はぽつりと話し始めた。
「まずな、初めての夜にな、廊下の奥から……カチャ、って音がしてん。初めは気のせいやと思うことにしたんや。でもな、日に日に音が激しくなっていって……昨日なんかは、カチャカチャカチャって……何人もおるような感じやってん。しかもな、毎日2時前後なんや……どう思う?」
マグカップを置きながら、俺は少し考える。
「ふむ……刀なら、そういう話もまぁあるけど……
カチャカチャカチャって、人が増えるようなもんあったか……?」
自分でも答えが出ないまま、とりあえず核心に触れる。
「で、お前はどうしたいんや?」
彼は、少しだけ視線をそらしながら言った。
「……お前に刀を預けようと思ってな」
「おいおい、俺ん家は曰く付きの処理場ちゃうぞ」
そう言うと、彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「いや……お前、魅力的に感じへんかったやろ?
なら、なんとかなるかなと思ってよ……」
「勝手やな……」
そう言いながらも、長い付き合いの中で、こういう頼みを断れた試しがない。
「まぁええわ。長い付き合いやし預かるけどな。
ただし今度からはちゃんと連絡入れろよ?
じゃないとお前ん家にヤバそうな骨董品まとめて置いて帰るぞ?」
そう言うと、彼は本気で困った顔をして、
「まじ堪忍してや……今回はほんま悪い思ってるねん……しかも、音が気になりすぎて寝れへんのよ……」
弱った声でそう言った。
「わかったわかった。預かるよ」
そう言って、彼の肩を軽くポンポンと叩く。
「その代わり、今度晩飯奢れよ」
そう笑いながら模造刀を受け取り、玄関へ向かった。
外に出ると、昼の光が少し傾き始めていて、刀の重みが腕にじんわり伝わる。
“今晩が……少し楽しみではあるな”
そんなことを思いながら、俺は家へ向かって車を走らせた。




