平日のお休みに5
「実はな、その模造刀を売ってた露天の人が少し変わった人でな。妙に腰は低いのに、なんか……上手いこと言いくるめられた感じがするねん。でも、値段も最初の価格から二割くらい下げてくれたから買ったんや」
彼はそう言いながら、ちらっと和室の方へ視線を向けた。
「で、持って帰ってきて……今お前が見てたあの模造刀なんやけどな。お前はどう感じる?」
真剣な顔でこちらを見てくる。
「近くで見てないからなんともやけど……今のところ特に引かれるもんはないな」
素直にそう言うと、彼は小さくうなずいた。
「やっぱりか……実はな、“持つべき人が持つ模造刀”やって言われたんや」
「まぁ、骨董品ならよく言われることではあるよな。刀の伝承にもそんな話多いし」
そう返すと、彼はおもむろに立ち上がり、和室の奥へ向かった。
畳の上に置かれていた刀を手に取り、そのまま俺に差し出す。
「抜いてみてくれ。俺には刃紋が……なんか、魅力的に感じるんだよ」
真っ直ぐな目で言われ、俺は刀を受け取った。
ゆっくりと鯉口を切り、鞘から刃を引き抜く。
刃先から乱刃の刃紋が揺れるように浮かび上がるが、
ところどころ“間”が違うような、不思議な造りになっている。
言われてみれば確かに凝っている。
けれど……俺には、そこまで響かなかった。
「……俺にはそこまでかな」
そう言って刀を返すと、彼は「そうか」とだけ言い、
刀を丁寧に鞘へ戻してから席に戻った。
そして、マグカップを両手で包むように持ちながら、
目を伏せて小さくつぶやいた。
「あの刀がうちに来てから……少し、変なことが起こるねん……」
その言い方は、怖がらせようとしているわけでも、
大げさに言っているわけでもない。
ただ、“説明しづらい何かがある”という重さだけが、静かに滲んでいた。




