平日のお休みに4
「全く、焦って連絡するなら初めから説明して呼べよ」
そう言うと、彼は頭をガシガシ掻きながら、へへへ、と気まずそうに笑って、
「ごめん」
と小さく言って下を向いた。
「で? その模造刀になんかあったんか?」
問いかけると、彼は口を尖らせるようにして、
「うーん……まだ、気の所為かもしれんしなぁ……」
妙に歯切れが悪い。
普段なら勢いで全部しゃべるくせに、今日はやけに慎重だ。
「帰るぞ?」
わざと立ち上がる素振りを見せると、彼は慌てて手を伸ばしてきた。
「待て待て! ちょっと考えがまとまらんから……!」
そのまま立ち上がって俺を止める。
本気で焦っているのが分かる。
「なら、ちゃんと話せよ。
どうにもならんかもしれんが、それなりには色んな怪談やら奇譚やら聞いてきたからな。対処は出来んでも、話なら笑わずに聞いてやれるぞ?」
そう言って、俺はもう一度座り直し、コーヒーをひと口飲んだ。
彼も同じように腰を下ろし、腕を組んだまま視線をあちこちに泳がせている。
どう話せばいいか、頭の中で順番を並べ替えているのだろう。
“まぁ、待つか”
そう思いながら、マグカップを軽く揺らして香りを吸い込む。
ふと視線を横に向けると、開け放たれた和室の奥に、一本の刀が置かれていた。
あれが例の模造刀なのだろう。
鍔の彫りは確かに凝っているが、それ以外は特に目を引くようなところはない。
俺にはただの古い模造刀にしか見えない。
そう思っていると、彼がようやくこちらを見た。
迷いが晴れたような、話す覚悟を決めたような目だった。




