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窓ガラスの君は?
仕事が長引いて、帰るのがだいぶ遅くなってしまった。
バスを逃すと一時間は待たなければならない。それはさすがに面倒だ。
そう思いながら更衣室へ向かい、手早く私服へ着替える。
バタン、と乱暴にロッカーを閉めて駅へ走る。
何とか電車に間に合った。
「これで間に合うな」
そう独り言を呟きながら、人の少ない車両に乗り込む。
オープンイヤーのイヤホンをつけ、息を整えるようにBPMのゆっくりしたジャズを流す。
座ると寝てしまいそうで、扉にもたれたまま立って最寄り駅を目指す。
乗り換え駅で一度降りると、疲れのせいか欠伸が出た。
眠気を振り払うように洋楽ロックへ切り替え、無理やりテンションを上げる。
最寄りへ向かう快速電車が来たので乗り込む。
窓の外を眺めると、点々と家の灯りが流れていく。
ぼんやりと景色を追っていると
各駅停車しか止まらない駅を通過した瞬間、
窓ガラスに“血の気のない男性の顔”が一瞬だけ映った。
えっ。
瞬きをすると、もう何もなかった。
ガラスには自分の顔が戻っている。
先程より疲れているように見えた。
あれは、なんだったんだ。
それ以来、電車では窓の方を向いて立つのをやめた。
写るのが自分だけとは限らないから…。




