美容室でのこと7
神社の話をしてから、彼の口数は目に見えて減っていった。
さっきまで普通に喋っていたのに、急に言葉が途切れ、車内にはエアコンの風とタイヤのロードノイズだけが流れていく。
数分の沈黙のまま駐車場に着き、車を停める。
エンジンを切ると、夜の静けさが一気に押し寄せてきた。
「行くぞ」
そう声をかけても、彼はシートに沈んだまま動かない。
渋る肩を軽く叩き、半ば歩かせるようにして神社へ向かう。
参道に足を踏み入れると、
街灯の届かない境内の空気がひんやりと肌にまとわりつく。
ジャリジャリと砂利を踏む音だけが、静まり返った空間に響く。
ふたりの足音が、妙に大きく感じられた。
鳥居をくぐると、空気が一段冷えたように感じる。
手水場の水は夜気で冷たく、手を清めるたびに指先がきゅっと締まる。
本殿の前に立ち、ふたりで参拝を済ませる。
手を合わせる間、彼はずっと俯いたままだった。
「帰るか」
そう声をかけると、
「おぅ」
と、さっきまでの沈黙が嘘のように明るい声が返ってきた。
鳥居をくぐり、軽く頭を下げて振り向いた瞬間だった。
ちゃきっ。
金属がわずかに擦れるような、短く鋭い音が本殿の方から響いた。
鯉口を切る時のような、あの独特の音。
ふたり同時に振り返る。
視線の先には、灯りの落ちた静かな本殿があるだけ。
風もなく、木々も揺れていない。
ただ、夜の闇が濃く沈んでいるだけだった。
「なんだったんだ」
そんな思いを胸にしまい込みながら、ふたりでゆっくりと参道を戻り、駐車場へ向かった。
帰りの車の中、彼はなんか体軽くなったかも、そういいながら笑って話しながら彼を家に送っていった




