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美容室でのこと3

店員さんを呼んで注文を済ませると、

「ドリンクバーどうぞー」と言われ、ふたりして立ち上がった。

「今日は飲まんのか?」

そう聞くと、彼はグラスを手にしたまま、妙に真面目な顔で言った。

「ここんとこ酒に嫌われとるねん。……倦怠期やわ」

そう言いながら、烏龍茶をグラスいっぱいに注ぐ。

仕事終わりの男が“酒じゃなくて烏龍茶”というだけで、なんとなく違和感がある。

「珍しいな。体でも壊して、それの相談か?」

そんなことを思いながら、俺も烏龍茶を注いで席に戻る。

彼はまだ真剣な顔のまま、グラスを持ち上げて一口飲んだ。

そのあと、何を言うべきか迷っているように視線が泳ぐ。

いつもなら、座った瞬間からどうでもいい話を始めるタイプなのに。

とりあえず、彼の頭がまとまるまでスマホを開き、来ていたメッセージに返信する。

その間に、階段を上がってきた店員さんが料理を運んできた。

湯気を立てる皿がテーブルに並ぶ。

油の香りと、炒めた野菜の甘い匂いが一気に広がって、自然と顔が綻ぶ。

彼も同じように、少しだけ表情が緩んでいた。

店員さんがテーブルから離れていくのを見送ってから、彼は箸を持つ前に、ふっと俺の方を見る。

「お前さ、昔から変な話とか集めてたよな。聞くのも好きやって。……まだ変わってないんか?」

「ん?怪奇譚は好きでよく集めてるぞ。おもろいし、なかなか怖い話もあるし、びっくりすることもあるけどな」

そう笑いながら言うと、彼は小さく息を吐いた。

「……やっぱ、お前なら大丈夫かな」

そう言って、ようやく重い口を開き始める。

「実はな。ちょい前に来たお客さんの髪切ってから、困ったことが起こっててな…… 誰かに言うても、与太話って言われそうなことでよ」

言いながら、少し目を伏せてから、こちらを伺うように視線を上げてくる。

「おぅ、お困り事で、それが与太話に聞こえるなら……ぜひ聞かせてくれ。俄然興味出てきたわ」

そう笑って返すと、彼も少しだけ肩の力を抜いたように笑った。

「……良かったわ。ひとりで抱え込むのは、なかなかこたえててな」

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