表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
455/497

美容室でのこと2

少しして、店の裏口のドアがガチャッと開き、彼が出てきた。

仕事終わりの独特の疲れと、まだ手に残っているであろうシャンプーの匂いをまとったまま、片手を上げてこっちへ歩いてくる。

助手席の扉を開けながら、

「お待たせ。すまんな」

「いや、ええで」

「何食うよ?」

「誘ったんお前やろ。なんか考えてきてるんちゃうん?」

「とりあえず、いつもの中華料理屋行こうや」

「あそこか。ええな。青椒肉絲、あれほんま美味いし」

「相変わらず好きやな、お前」

「ええやろ。あれ食ったら元気出るねん」

そんなやり取りをしながら車を発進させる。

夜の道路は、退勤ラッシュが少し落ち着いたくらいの時間帯で、まだ車が途切れず流れていた。

信号待ちのたびに、彼がシートに深く沈み込んで息をつくのが分かる。

「しかし珍しいよな。お前から飯の誘いなんか」

「まぁ、ちょっとな」

「なんやその歯切れ悪い言い方」

「まぁまぁ。飯屋着いてからゆっくり話すわ」

「おぅ、そうか」

そんな会話をしながら、いつもの中華料理屋に着いた。

外観は年季が入っているのに、なぜか落ち着く店だ。

ドアを開けた瞬間、油の香りと、強火で炒めた調味料の香りが一気に鼻に入ってくる。

この匂いを嗅ぐと「ああ、ここ来たな」って毎回思う。

店内は混んでいたが、運よくすぐに2階のテーブル席へ案内された。

階段を上がる途中、厨房から中華鍋を振るガンガンという音が響いてくる。

席に着くと、二人して同時に「よいしょ」と声が出た。

「おっさんやな俺ら」

「ほんまにな。昔こんなん言わんかったのにな」

笑いながらメニューを開く。

ページをめくるたびに、油で少し波打った紙がパリッと音を立てる。

店のざわめき、皿のぶつかる音、厨房の火の音。

全部が“いつもの夜”の空気を作っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ