ゲレンデへの道中で1
会社の昼休憩。
弁当を食べ終えて、スマホを片手にのんびりタイムラインを眺めていた。
食堂のざわざわした声と、電子レンジの開閉音。
いつもの昼休みの空気がゆっくり流れていく。
そのとき、背中のほうから声が飛んできた。
「おい、今週末空いてるか?」
顔を上げると、先輩が立っていた。
「えっ? あ、はい。空いてますけど……どうしました?」
「お前、ボードするだろ? 一緒に行こうぜ」
「あ、いいですよ。どこのゲレンデ行きます?」
「○○ってとこ、小さいけど良さそうやねん」
「いいですね」
「おぅ、後輩も連れてくから現地集合な」
「わかりました」
「朝イチっすか?」
「せやな。遅れるなよ」
先輩は笑いながら肩をバシンッと叩いて、タバコを吸いに行った。
その背中を見送りながら、自然と気持ちが少し上向く。
二年ぶりのボードだ。
久しぶりに雪の上を滑れると思うと、なんだか嬉しくなる。
午後の仕事を片付けて家に帰ると、すぐにボードを引っ張り出した。
アイロンを温める。
じわじわ熱が伝わってくる感じが好きだ。
ワックスが溶け始めると、ぽた、ぽた、とソールに落ちていく。
そのままアイロンでゆっくり伸ばすと薄く光る膜が均一に広がっていく。
「よし」
固まるのを待って、余分なワックスを剥がし、ブラシで丁寧に仕上げる。
何度か繰り返して、ようやく満足できる状態になった。
壁に立てかけたボードを見ながら、自然と口元がゆるむ。
週末、久しぶりの雪山。
ただそれだけなのに、なんだか楽しみで仕方がない。




