旧友からのメッセージ4
背筋を伸ばして、改めて聞く姿勢を整える。
彼はカップの縁を指でなぞりながら、小さく息を吐いた。
「いや、実はな……相談できるのはお前くらいしか思いつかんかったんや」
そう言いながら、無意識に爪を噛む。
昔から、悩み始めた時の癖だ。
「俺にしか相談できんってどうしたよ。金ならないぞ」
軽く笑いながら言うと、彼は眉をひそめて、
「金じゃねぇよ。金なら親に頼むわ」
と返してきた。
そのあと、声を落として、自分に言い聞かせるように呟く。
「……不思議な話になるんかな……いや、怖い話か……」
「おぉ、そっちの話か?」
そう聞くと、彼は少しだけ肩をすくめて、
「あぁ。お前、昔から集めてたやろ?
なら、なんかええ方策見つかんちゃうかなってさ」
「聞くことは出来ても解決は出来んぞ。俺は聞くだけや」
そう返すと、彼は前のめり気味に言った。
「それでもええねん。とりあえず聞いてほしい。
お前の経験とか、聞いた話から類似したもんとか、
その時どう対処したとか……なんでもええから教えてほしいんや」
その必死さに、心の中で
“おいおい……これは相当じゃないか?”
と呟く。
「とりあえず話だけは聞くわ。抱えてるのも辛いやろし。あくまで聞くだけな。解決は求めるなよ?」
そう言うと、彼は深く頷いた。
「助かる……。実はな、今付き合ってる彼女、どうも霊感があるらしいんやけどな。こないだ同棲するのに物件を何件か見に行ったあとから、様子がおかしくなったんや」
「ん?物件見てからか?それまでは?」
「特に変わりなかったんや。普通やった。
でな、先週見に行ったんやけど、広い方がええのと、車二台置けるのがええって言うて、一軒家の借家を回ってたんや」
「車二台やと駐車場代も馬鹿にならんしな」
「そうやねん。でな、古民家でめっちゃ広いのに安い物件見つかってよ。なんと驚きの7LDKの納屋付きで、4万よ。見に行くやろ?」
「それは安いけど……古民家ってことは広すぎるやろ?それに制約も多いやろ?」
「それがな、リノベーションされてて、めっちゃええ感じやったんや」
「ほう……で?家の話は置いといて、お困り事は?」
促すと、彼は少し身を乗り出して続けた。
「それ見終わって、ふたりで“ええなここ”って話してたんや。不動産屋の営業さんも感じ良かったし、案内も丁寧やった。でな、家の敷地の裏手に小さな祠と鳥居があってな。せっかくやから手ぇ合わせて帰ったんや」
「それ、よう手ぇ合わせよう思たな」
「いや、なんとなくや。深い意味はないで。
で、帰ってきてから急に彼女が“あの家に決めよう”って言い出してな…
いや、あと何件か見るって言うてたやんでも聞かへん。“あそこにしよ”の一点張りや」
「……ふむ」
「それだけなら良かったんやけどな。その日の夜、彼女送り届けて帰ったら、彼女のお母さんから電話かかってきてな。“様子がおかしいんやけど、なんか知らん?”って」
「様子がおかしい?」
「急に……鶏肉、生で食べようとしたらしいねん」
「おいおい……奇行って言う感じじゃないやん」




