旧友からのメッセージ1
金曜日の仕事終わり。
定時で帰るためにパソコンを落とし、更衣室へ向かう廊下を歩いていると、胸ポケットのスマホが震えた。
この時間帯の通知はだいたい広告か、ポイントカードのやつやろ。
そう思いながら取り出して画面を見ると、メッセージが1件と表示されていた。
指紋認証でロックを外す。
差出人の名前を見た瞬間、思わず足が止まった。
懐かしい友人だった。
最後に会ったのは何年前やったか。
お互い忙しくなって、自然と連絡も途絶えていた。
メッセージは短い。
「久しぶり。突然の連絡ですまない。
近々で時間を作って貰えないだろうか?」
文章の癖は昔のままや。
余計な前置きも、無駄な言い回しもない。
必要なことだけを送ってくる、あいつらしい合理さがそのまま残っていた。
少し笑いながら返信を打つ。
「長くなるなら明日。短いなら今からなら空いてる。」
マルチとかのお誘いならご遠慮します。
冗談半分で追記して送ると、すぐに既読が付いた。
間髪入れず返事が返ってくる。
「今日、とりあえず会いたい。
あと、そんな話ではない。」
その“とりあえず”という言葉に、ほんの少しだけ違和感を覚える。
昔から段取りを重んじるタイプで、曖昧な言い方をほとんどしなかったはずだ。
けれど、長いこと会ってへんし、人の性格なんて変わるもんやろ。
そう自分に言い聞かせる。
「駅前の○○って喫茶店で、18時に 」
そう返すと、またすぐに返信が来た。
「ありがとう。すぐ向かう。」
“すぐ向かう”という言葉が、妙に急いでいるように見えた。
仕事終わりの金曜やし、そんなに急がんでもええのに。
でも、久しぶりに会えるのは素直に嬉しい。
急いで着替えを済ませ、ロッカーを閉める。
外に出ると、金曜の夕方特有のざわついた空気が広がっていた。
仕事帰りの人たちが駅へ向かい、どこか浮き立ったような雰囲気が街全体に漂っている。
「早めに着いて、ゆっくり待とう」
そう思いながら、少しだけ足を速めた。




