喫茶店にて11
俺は慌てて店外に出て、ポケットからスマホを引っ張り出した。
今回のは、俺が聞いて「怖かったな」で終わる話じゃない。
そんな軽いもんじゃない。
電話帳をスクロールして、○○神社の番号を呼び出し、すぐに発信する。
コール音が二度鳴ったところで、若い女性の声が出た。
「はい、○○神社です」
「あ、いつもお世話になっております、△△です。
宮司さんはいらっしゃいますでしょうか?」
俺の名前を聞いた瞬間、電話の向こうの彼女は「あぁ、至急ですね」と言った。
何度も世話になっているから、もう察してくれているのだろう。
「すぐ取次ぎます」
数秒後、受話器の向こうから聞き慣れた、しかし呆れたような声がした。
「……あなたはまた、首を突っ込んでいるんですね」
胸の奥がちくりと痛む。
良心の呵責というやつだ。
「はい、実は……」
そう言って、友人の身に起きたことを一通り説明した。
説明が終わると、受話器の向こうで大きなため息が落ちた。
「……その子を連れて、神社まで来なさい。完全に救えるとは言えませんが、多少はなんとかなるでしょう」
その言い方は、“本当に危ない状態だ”と告げているようだった。
「ただし、今すぐにですよ」
念押しの声が、妙に鋭く耳に残る。
「……わかりました」
そう答えて電話を切り、深く息を吐いてから店内に戻った。
扉を開けると、昼下がりの喫茶店の空気がさっきより少しだけ重く感じた。
友人は、追加で頼んだカフェオレと甘い菓子を前にして、ぼんやりとテーブルを見つめていた。
俺はその向かいに立ち、静かに声をかけた。
「……行くぞ」
友人はゆっくり顔を上げた。
その目の奥に、さっきまでなかった“影”が見えた気がした。




