喫茶店にて3
友人は深呼吸して、話し始めようと口を開いた。
……が、その前に、どうしても気になっていたことを先に言ってしまう。
「それ、聞いて大丈夫な話なんやろな?お前、たまに無意識に“障”のある話持ってくるから油断ならんねん」
わざと出鼻をくじくように被せると、友人は一瞬きょとんとしてから、慌てたように手を振った。
「いやいや、多分大丈夫な話やって。
多分……な?」
最後の“な?”が小さくて、自分でも確信がないのが丸わかりだった。
相棒の彼女が、くすっと笑いながらカップを置く。
「そう言いながら、聞く気はあるんでしょ?
あなた、こういう話好きじゃん」
図星すぎて言い返せない。
怪奇蒐集が趣味の俺に、“聞かない”という選択肢は最初から存在しない。
……とはいえ、素直に認めるのも癪だ。
「どっちでもいいけど?」
わざとそっけなく言うと、友人が吹き出しながら、
「男のツンデレはキモイぞ」
と返してきた。
「ほっとけや」
そう言いながらも、三人の間に流れる空気は軽くて、昼下がりの喫茶店の静けさと妙に馴染んでいた。
ただ…その軽さの奥に、ほんの少しだけ“間”があった。
友人がコーヒーを一口飲んで、カップを置くまでの数秒。
相棒の彼女が、視線を落として指先でソーサーをなぞる仕草。
どちらも、 普段なら気にも留めないような些細な動き。
けれど、今日はなぜかその“沈黙”が、ほんの少しだけ長く感じられた。
友人はようやく口を開く。
「……じゃあ、順番に話すわ」
その声はいつも通りのトーンなのに、どこか、ほんの少しだけ “言いにくそうな気配”が混じっていた。




