喫茶店にて1
これは、心霊系の動画投稿をしている友人から聞いた話だ。
休日の昼下がり。
部屋でゴロゴロしながらテレビを眺めていると、テーブルの上のスマホが震えた。
「誰やねん……」
そう思いながら画面を見ると、友人からの「今暇?」という短いメッセージ。
一応暇、と返すと、すぐに既読がついて「今から会えない?」と返ってきた。
珍しく急いでるなと思いながら、「会えるけど、どうしたん?」と送ると、すぐに長めの文章が届いた。
「先週の撮影であった話をぜひ聞いてほしい。
○○喫茶店で話を聞いてくれ。」
位置情報まで添えられている。
(行かんかったら拗ねるやつやな……)
そう思いながら「わかった」と返信し、床に根を張っていた体をようやく起こした。
上着を羽織り、玄関を出て車へ向かう。
エンジンをかけると、低い振動が足元から伝わってきて、フロントガラスの曇りがゆっくりと薄れていく。
「今日は……流行りの曲でもかけるか」
よく知らないアーティストの曲が流れ出し、軽いリズムが車内に広がった。
暖房が効き始め、指先の冷たさが少しずつ戻ってくる。
「よし、行くか」
独り言をつぶやきながら車を発進させた。
昼下がりの道路は空いていて、信号もほとんど引っかからない。
窓の外には、冬の柔らかい日差しが広がっていた。
ナビの案内に従って曲がると、目的の喫茶店が見えてくる。
古いレンガ造りで、入口の横に小さな黒板が立てかけられている。
駐車場に車を入れ、エンジンを切る。
音楽が途切れ、静けさが戻った。
店の前には、友人が手をポケットに突っ込んだまま立っていた。
こちらに気づくと、軽く手を上げる。
「おつかれ。急に呼んで悪いな」
その声はいつも通りで、特に変わった様子はなかった。




