深夜の電話口2
目的地に着いたが、そこには誰もいなかった。
「あいつまた勝手に動いたんか?」
そう思いながら電話をかける。
コール音は続くのに、周囲から着信音は聞こえない。
深夜の静けさだけが耳に残る。
数回の呼び出しのあと、友人が出た。
「もしもし……こんな時間に何やねん」
寝起きの、不機嫌そうな声。
「いや、お前どこおんねん?」
「え?今家で寝てたんやけど? お前こそこんな時間に急に電話してきて何なん」
「いや、お前事故ってレッカーになったからって電話してきたやろ?
だから〇△の喫茶店前に迎えに来たんやが?」
「は? 俺今日ずっと家でゴロゴロしてたぞ。
車も今、俺の駐車場にあるよ」
「えっ?」
思わず声が漏れた。
すると友人は、呆れたように言った。
「お前こそ女とおるんやろ。イタズラ電話する前にその子の相手したれよ……俺寝るわ」
ブツッ、と電話が切れた。
「えっ……? 俺の周り、誰もいないんだけど?」
喫茶店前の歩道を見渡す。
誰もいない。
少し離れた街灯だけが、小さく地面を照らしている。
スマホを見ると、確かに“友人からの着信”が残っている。
スクショを撮り、まっすぐ家に帰るのが妙に怖くなって、少し離れたネットカフェへ移動した。
朝まで時間を潰し、日が昇ってから帰ることにした。
帰り道、ふと喫茶店の前を見る。
昨夜と同じ場所に、供えられた花がまだ置かれていた。
後日、友人と会ったときに、あの夜の話をしてみた。
「ほんまに電話してへんって。寝てたし」
「でも着信残っとったぞ」
「知らんがな。俺のスマホには何も残ってへんし」
友人は笑っていたが、どこか腑に落ちない。
帰り際、ふと友人の車を見ると、フロントガラスの端に、小さな花びらが一枚だけ貼りついていた。




