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友人からの預かり物8
とりあえず、友人宅に急ぐ。
道中は何事もなく、むしろ信号が怖いくらい青ばかりだった。
車を停めてエンジンを切り、外に出ると、
友人が笑いながら玄関から出てきた。
「よう、来る頃だと思ったよ」
そう言いながら家に招かれる。
中では、アイヌ料理が用意されていた。
オハウにルイベ。
相変わらず手際がいい。
「さて、早速見せてくれ」
そう言われ、先にマキリを出す。
友人は一目見るなり、
「……お前、気にいられてるな」
と呟いた。
柄の彫りを指でなぞりながら、
「この彫り、地域が限られとるはずなんやけどな……」
と小さく言う。
どうやら紋様に見覚えがあるらしい。
軽く肩をすくめながら、
「お前が持てばいいやろ。持ち主として認められてるぞ」
と笑う。
たしかに俺には切り傷ひとつない。
怖いのには変わらないが、“選ばれた”と思うと、悪い気はしなかった。
結局、預かるという形で部屋に置けばいいと言われ、
今回は飾ることにした。
全く、波乱万丈な休日になったものだ。
昼の暖かい風を受けながら 、友人と笑い合い、民俗学について意見を交わす。
その間、刀袋の中のマキリは、ただ静かに横たわっているだけだった。
これが、休日の朝のほんの数時間で起きたことやと思うと……今でも妙な気分になる。




