友人からの預かり物7
数コール後に電話に出てくれた。
「よう、俺の優雅な朝飯を邪魔するなんて、酷いやつだな」
そう笑いながら言われた。
いつも通りの軽口だが、今はその軽さが少しだけありがたい。
「おはよう。朝早くにごめんやで。ちょっと教えて欲しいことが出来てしまってね」
そう言うと、電話の向こうで小さく息を吐く音がした。
「ほう。俺にってことは……アイヌ関係か?」
相変わらず勘のいい友人だ。
「そうやねん。縁があって、マキリを一振り手元に来てな。抜いたら赤黒い物がついてる。来歴は全部は知らんが、いつものあいつが持ち込んできた。海外の友人から貰ったらしい」
そう言うと、電話の向こうでくつくつと笑う声がした。
「相変わらずお前からの電話は退屈せんな。
……で、曰くありげなマキリを抜いて怪我ひとつしてないとは、恐れ入るわ」
その言い方が、冗談半分、本気半分に聞こえる。
「とりあえず持ってきてくれ」
そう言ってくれたので、都合のつく時間を聞く。
「今からお前が支度して家に着けば……ランチが一緒に食えるな」
そういうことになった。
慌てて上着を羽織り、マキリを刀袋に放り込む。
その前に、とりあえず自分の体を確認する。
指先、手のひら、腕
特に切れた場所などはない。
「……ほんまに、なんで俺は無事なんやろな」
小さく呟きながら、緊急用の止血帯を車に積み込む。
念のためだ。
車に乗り込み、エンジンをかける。
低い振動が体に伝わる。
シートベルトを締め、深呼吸をひとつ。
視線を前に向けると、助手席の足元に置いた刀袋が、妙に存在感を放っている。
「……とりあえず、行くか」
アクセルを踏み込み、ゆっくりと車を走らせる。
朝の光は明るいのに、胸の奥には重たいものが沈んだままだった。




