友人からの預かり物2
起きて、寝ぼけた頭のまま適当に服を引っ張り出して着替える。
まだ体が布団の温度を引きずっていて、肌に空気が触れるたびにひやっとする。
まずはコーヒーだ。
豆をミルに入れてハンドルを回すと、ゴリ…ゴリ… と砕ける音が、静かな部屋にやけに響く。
香りがふわっと立ち上がり、ようやく脳が現実に戻り始める。
フライパンを火にかける。
油を垂らすと、薄く広がって、じゅわっ と小さく鳴いた。
そこへ卵を割り落とす。
白身が一気に広がり、縁がぷつぷつと泡立つ。
黄身は丸く、朝の光を吸ったみたいに少し赤みが強い。
ついでにベーコンも放り込む。
脂が跳ねて、パチッ、パチパチッ と弾ける。
肉の匂いが濃くなり、寝起きの胃がようやく“食べ物”を認識し始める。
パンをトースターに突っ込み、ツマミを回す。
カチッ と軽い音がして、すぐに中のヒーターが赤く灯る。
パンの表面がじわじわと色づいていくのがガラス越しに見える。
そんなふうに朝の支度をしていると、
ちょうどベーコンの脂が一番跳ねるタイミングで、
ピンポーン!
とチャイムが鳴り、続けざまに ドンドンッ! と扉を叩く音が響いた。
「……うるせぇなぁ」
火を弱め、フライパンを横にずらしながら玄関へ向かう。
油の匂いがまだ空気に漂っている。
鍵を開けると、案の定、招かれざる客が満面の笑みで立っていた。
「おはよーさん!」
その顔面に軽くチョップを入れる。
「近所迷惑やろ」
「いてぇ! いやでも、ええ匂いしてんなぁ」
文句を言いながらも、遠慮という概念を知らんのか、
そいつは靴を脱ぎ捨ててズカズカと上がり込む。
俺は深くため息を吐いて、キッチンへ戻った。




