深夜の電話4
「んでな、スマホのライトつけて、周り照らしながら歩いてたんやけどよ、どこにも燃えてる家はなかったわけよ」
そこまで話すと、
ズズズ……
と友人がお茶をすする音が受話器越しに響いた。
「ふーん。でもそれだけなら大した話じゃないな。こんな深夜に連絡入れてくるほどじゃないやろ?」
そう返すと、友人はすぐに舌打ち混じりで言った。
「チェッ、やっぱりお見通しかよ」
ちょっと拗ねたような声色だ。
その感じが妙に可笑しくて、思わず口元が緩む。
どうやら、まだ話していない“本命”があるらしい。
友人は湯呑みを置くコトンという音を響かせて、
少しだけ間を置いた。
「まぁ、ええわ。それでな、帰り道やし、道すがら探しながら歩いてたら匂いが強くなってきたんや」
それを聞きながら、ペンを走らせる。
紙にペン先が擦れる音が、深夜の静けさの中でやけに大きく響いた。
「ほんで?」
促すと、友人は少し声を潜めるように続けた。
「途中な、明らかに焼け跡みたいになった家の前に着いたねん。そしたらな、家の中にロウソクの火みたいなあかりが、ゆらゆら動いててよ」
「えっ? 焼け跡ってことは火事跡やろ?」
「おぅ。俺も最初、酔いが回りすぎて幻覚でも見てるんか思たよ。でもな、その火が風もないのにゆらゆら揺れとるねん」
そこで一拍置いて、
「しかも、人が手に持ったくらいの位置で」
その言い方に、思わずペンが止まる。
「それは、不思議やな」
「せやろ? でや、俺は気になったから、ほんまはあかんねんけど中見に入ったねん」
「それはさすがにワンパクすぎるし、あかんやろ」
思わずツッコむと、向こうでくつくつ笑う気配がした。
湯呑みを置くコトンという音が続き、深夜の空気がまた静かに戻ってくる。




