第62話 テールム開発
「最近新魔法の開発ばかりしてるがどうしたんだ?」
父さんが梨を食べながら言った
「たまには魔工具ばかりではなくて魔法の方も研究したくてね。丁度長期休みだしいい機会かなって」
俺が将来的に目指しているのは魔工師だが、竜神ダンジョンの一件で俺自身もっと強くなる必要があるため魔法の研究にも身を入れることにしたのが本音だ。まぁ、元々魔法の開発には興味があったしな。
ちなみにだが、魔工師は魔導武具や魔法器具を作る者の名所である。魔法の研究や使う者に関しては魔法師と呼ばれている。
「なるほどなー。こっちとしてはもう少し夏のテールム製作に期待したかったんだが…」
「…ん?どうゆうことだ?十士道の売れ行きでも悪いのか?」
クロスドのテールムは俺が一から完全オリジナルで作ったテールムであり、その設計図を父さんに渡すことで父さんの会社で量産して数%の利益を俺がもらっている現状だ
「実のところそうなんだよねぇー。ほらっ、最近ダンジョンで剣や弓なんかの武器系のアイテムドロップが増えてきただろ?そのドロップアイテム達には固有の力があるからテールムを使わない探求者達も増えてきてね」
「本当に原因はそうなのか?ドロップアイテムが強いとは言っても魔法を使うのにテールムは必須だ。近接メインの奴らならともかく、魔法を使わない探求者なんていないだろ?」
「ははは。さすが夏だね。原因はそれだけじゃなくてね。クロスドの値段が高すぎるんだ…。クロスドのテールムは1500万以上が基本的だが、他のテールムは100万程度で買えてしまう。さらにコラボ商品なんかで少し高値で出して収益を上げてるところもあるからね。性能がいいと言ってしまえばそれまでだけど、他のテールム制作会社が次々と新しい物を出していく中クロスドは現状作っている物しかないからね。値段を下げる方向で考えてはいるもののやはり性能が良い分難しくてね」
…ふむ。なるほどな
「なら、これなんかどうだ?」
俺はキューブから竜神ダンジョンで手に入れた黒竜の太刀を取り出した
「これは闇属性魔法が強化される黒竜の太刀というアイテムだ。これをテールムにしてみた」
「えぇ!!ダンジョンのアイテムをテールムにぃ!?!?」
父さんは眼鏡がズレるほど驚いて声を出した
「落ち着けって。元々効果のついたアイテムをテールム化する事で価値はさらに跳ね上がる筈だ。俺がダンジョンで手に入れたアイテムはテールムにしていくからそれを売ってくれるか?」
「出来なくはないけどー。」
「歯切れが悪いな。それだけじゃダメか?」
「んー。夏が手に入れたアイテムだけだとどうしても数に限りがあるからね。どうせならシーカー達が手に入れたアイテムをテールムにして売るのはどうかな?」
「それは俺も考えたがダメだ。なんせ俺は高校生だからな。学業にダンジョン、それにテールム開発もあるとなると1人じゃ無理な量だろ?」
「まぁ、たしかにね。親としては学業に支障が出るのは避けたいし。仕方ないか。じゃ、夏が手に入れたアイテムだけテールムにして売ることにしようかっ!」
「そうだな。それにこれからクロスドのテールムはさらに人気になると思うけどな」
「どうゆうこと?」
「ほらっ」
俺は今月号の月刊シーカーを父さんに見せた
「…!!!。えっ!これ千冬ちゃんっ!!??」
「千冬ちゃんじゃない!?いつのまに雑誌に載るようになったのよぉー!」
表紙を飾った千冬の姿に驚き母さんまで食いついてきた
「千冬がクロスドのテールムを使っていることが書かれているから自ずと売り上げも上がると思うよ」
「あなた!額縁に飾るわよ!」
「そ、そうだね!!これはすごい!」
心なしか俺が先ほど出した太刀のテールムより喜んでないか?
「へへへ。なんか照れるわね」
千冬が顔を赤くして言った
照れるなら取材なんて受けなければいいものを…
まぁ、千冬のおかげでクロスドの売り上げも上がると思えば感謝するべきか
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