053 合鍵
「本当ですか?」
「ほんと」
「私が一番大切です?」
「うん」
「ならいいです」
姫乃はにこりと笑った。
ああ、やっぱり姫乃はとても可愛らしい。
誰よりも魅力的でその笑顔がたまらなく素敵だ。
「その割に鈴華さんの体をずっと凝視してたのは気になりましたが」
「うっ!」
「綺麗だって言ってましたもんね。まぁ……あのひどい生活であの容姿を維持できるのか不思議でなりませんが」
でも男ならあの体は見てしまうだろ。
結構我慢してる方なんだけど……理解は得られないだろうな。
そんなことを思っていたら姫乃がシャツを脱ぎ始め、下着姿になる。
鈴華を超えるその圧倒的な胸部を思いっきり露出したのだ。
「ひ、姫乃!」
「わ、私だって負けてないんですから。そりゃ鈴華さんより身長は低いですけど」
姫乃はぴとりと俺の腕に胸を押し付けてきた。
「胸の大きさだったら負けてないと思います」
「……そ、そうだね」
「触らせてあげたら他の女の子に見惚れないって約束してくれますか?」
ちょっとだけ挑発するように姫乃は声色を変えて聞いてくる。
そんな甘い提案に思わず乗ってしまいそうだった。
「か、家族同士でさすがに胸は触らないと思うから」
「そうですか。その割に視線が泳いでますよ」
「ぬっ」
「燐くんのえっち。ふふっ」
そのあまりに可愛いからかい上手なお姫様に手玉を取られてしまったようだ。
だが揶揄われっぱなしもシャクである。
幸い俺は言われっぱなしですむ男じゃない。
「じゃあ……揉ませてもらおうかな。胸以外のところを」
「へ」
姫乃の弱点である脇腹揉み揉みをしてあげることにした。
両手を使って姫乃のスベスベの素肌に両手を走らせた。
「にゃあっ!?」
「ほれほれモミモミ」
「だめぇっにゃはははっ! やだぁっ!」
やられたり、やり返したり……俺と姫乃の関係はそれでいいのかもしれない。
◇◇◇
「そんなわけで燐くんの部屋は夜間施錠します。鈴華さんは近づかないように」
「ちっ」
俺の部屋には鍵がなかったので今回の件で取り付けることになった。
鈴華は渋い顔をしていた。
「鍵はとりあえず俺が持っておくか」
俺の部屋なので俺が持っておくのが無難だろう。
だが姫乃がその鍵をひったくる。
「私が鍵を管理しますね」
「え」「え」
そのあまりに自然にひったくってきたので二人して変な声が出てしまった。
そして姫乃さんの表情が強まる。
「何か文句あるんですか」
「何でもありません」「何でもありません」
身長が高いはずの俺と鈴華はその家主の意向に口を挟めるはずもなかった。
そして。
姫乃がぽそりと声をかけてくる。
「二人きりになりたい時に使いましょうね」
そんなワクワクする時が早くくればいいのになって……思う。
お姫様にスイッチが入ってしまってますね。
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