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【書籍化】身内の世話に疲れた俺が選んだのは学園のお姫様と家族になることでした  作者: 鉄人じゅす
間章

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054 集まって

 俺達三人の微妙な関係はそのままに日だけは少しずつ過ぎていく。

 次のイベントが差し迫った時、俺達はある決断を迫られた。


「あたし達を呼んだわけを聞かせてくれるんだよね」


 ここはとあるチェーン店のカフェ。周りに聞き耳を立てている生徒もいない少し離れたカフェで俺達は集合していた。

 ここにいるのは俺と姫乃と鈴華。そして、姫乃の親友である平原みなもさん。


「あたしは違うクラスだからこうやって会うのは初めてかな。姫乃のお姉さん」

「ぴくり」


 鈴華は少し震える。ちょっと棘のある言い方になったからか。

 先日の大立ち回りで姫乃を傷つけたこと、親友としてはやはり許せないものがあったらしい。

 姫乃が今まで平原さんを押さえていたため騒がしいことにはならなかったが直接言いたいこともあっただろう。


「姫乃から事情を聞いてるし、姫乃が許すならあたしからは何もいわない。姫乃の味方になってくれるならあなたと仲良くしたいから」

「……ありがとう」

「まぁ私は許したとは言ってませんけどね」

「ぴえん!」


 姫乃のぼそりと言った言葉に鈴華は涙目になる。


「あの時のことはいいとして毎日毎日燐くんにベタベタベタベタ。私だってもっと甘えたいのに」

「わたしなんてほんのわずかじゃない! わたし知ってるんだからね。毎日夜な夜な燐の部屋に入って鍵閉めてるの! 何やってるのよ」

「鈴華さんには関係ないことです。ね〜燐くん」


「ソウデスネ」


 気づけば平原さんが俺を睨むように見ていた。


「燐音っち、随分と姫乃と仲良くなったよね。もう恋人レベルになってない?」


 俺と姫乃の肩が同時に震えたような感じがした。

 姫乃と目が合う。


「燐くんと私は家族ですから」

「……そういうことで」


 俺も姫乃もその先を具体化することを避けているように思える。

 出会いから今までその関係で居続けたんだ。今更違う関係に評するわけにはいかない。

 俺が一歩踏み出せばいいのかもしれない。だけど家族との関係に決着をつけられていない今、まだ早い気がする。


「わたしも燐の家族なんだから」


 横から鈴華が抱きしめてくる。


「……」


 無言で姫乃が横から抱きしめてくる。

 学園が誇る二人の美少女からの抱擁。普段ならにやけてしまうんだがちょっと今の状況だとあまり何も言えない。

 それはなぜかいうと俺の目の前に親友の和彦がいるからだ。


「和彦、何か言っていいんだぞ」

「そうだね。我が目を疑いそうな現実に思考が停止してたよ。つまり、燐音はハーレムを築いたってことだね」

「全然違うんだが」

「そうにしか見えないけど!?」


 ぱっと見たらそう見えるんだが違うんだよ。

 俺からすれば妹弟の夜華と朝也に抱きつかれてのと同じなんだ。

 ……。

 くっそ、姫乃の顔はめちゃくちゃ可愛いし、鈴華の体はめちゃくちゃ柔らかくて興奮する!


 二人を宥めて距離をとり、俺は和彦と話を詰めることにした。


「まさか燐音がお姫様と同居してたとは思わなかったよ。言われてみれば急接近してたし片鱗はあったんだね」

「何で教えてくれなかったんだって怒るかと思ったぞ」

「あはは、家のことなら友達として相談してほしいけど痴情のもつれは知りたくなかったかな」

「どこに痴情のもつれがあるんだ」

「誰が見てもそう見えるけど!」


 俺は清く正しい家族生活を送っている……。そんなわけないよな。

 最近、姫乃が物足りないですとアイマスクとか手錠とか持ってくるせいでいろいろ……。何も言うまい。


「おまけに黒姫様までね。クラスの男子が聞いたら燐音は殺されるかもよ」

「そこは正直予想外だ」


 姫乃の姉ということで鈴華は黒姫という名で呼ばれることがある。

 苗字が同じ片桐だからだ。ちなみに姫乃も金姫と呼ばれると聞いた。


 例の騒ぎがあっても鈴華の人気度はあまり落ちなかったのだ。

 黒髪ロングの超絶美人が実はポンコツってのは男心を揺さぶるもんだ。

 ちなみに片桐家本家から見放されている話は俺と姫乃しか知らない。


 和彦の肩に手にやる。


「和彦に聞きたいことがある」

「なにさ」


 俺は向こうで仲良く喋る三人の女の子を指さした。


「あの三人で一番可愛いのは誰だと思う?」

「何、その愚問」


 和彦は鼻で笑った。


「二人のお姫様も可愛いと思うけどやっぱり僕はみなもさんが一番かな」

「ほぅ」

「トランペットを奏でるあの姿が何より美しい。放課後に大汗をかいても一心不乱に奏で続け、暴走する時の彼女の姿は本当に魅了されっ!」

「和彦を選んで正解だったよ。でも言い方がかなり気持ち悪いな」


 こいつも普段は穏やかなんだけど音楽に熱が入ると暴走気味なんだよな。

 平原さんも変な女の子だけど、俺からすれば和彦も相当変な男だ。みんな人畜無害な男だと勘違いしているが。

 人畜無害ってのは俺みたいなのを言うんだ。


「燐音ってたまにどの口がって顔するよね」

「どんな顔だよ」


 和彦が実は姫乃や鈴華に恋心を抱いていると面倒だったから聞いておいて良かった。


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『身内の世話に疲れた俺が選んだのは学園のお姫様と家族になることでした』

2026年2月20日 発売です!

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