055 作戦会議
「鈴ちゃんも胸あるねぇ。あたしよりちょっと大きめ……EとFの境目くらいかな」
「ちょ、どこ触ってのよ。んっ! って鈴ちゃん?」
「鈴華だから鈴ちゃん。だめ?」
「あだ名なんて初めてだから嬉しい!……でも胸を揉むのはやめて」
「平原さんは相変わらずだな」
「女子部員もセクハラするし、僕も何度かされたよ。でもそれが心地よくて」
「おまえもメスになってんじゃねーよ」
「ごめんね姫乃。あたしにとっては姫乃が一番だから」
「じゃあごく当たり前に胸を揉むのやめてください」
「燐音っち! 鈴ちゃんより姫乃の方が巨乳だよ!」
「うん、知ってる」
「燐音?」
毎日のように抱きつかれてるからな。
やれやれ、俺はいつからこんな変態になってしまったんだ。
さて、本題に入るとしよう。
再び5人でテーブルを囲む。
「今度文化祭があるだろう」
テストが終わったら学校行事である文化祭の時期になってくる。
クラスの出し物は少しずつ準備をしており、隠キャ担当の俺は流れに身を任せている。
俺が出れば出し物を壊してしまうからな……なんて大それたこと言うはずもない。
だが状況が変わった。
「先生から何か出し物をして欲しいと直接頼まれまして」
「姫乃が?」
「ええ、できれば見せ物になるものだとありがたいって」
片桐姫乃の人気は校外にまで広がっている。
その美貌をさることながら品行方正で成績優秀だ。学校としては是非とも推していきたい存在なんだろう。
「あれ? わたしは何も言われなかったよ」
鈴華の呟きはノーコメント。
先生はみんなたぶん、鈴華がポンコツだってことを知っていると思う。
下手に出すより、姫乃を使った方が有益と思ったんだろう。
「正直、断ろうと思ってました。でも……都合の良い時だけ利用するのは嫌だなと思いまして。こちらからも意表返しを考えたんです」
「でも姫乃が何をしようと姫乃だからになっちゃうでしょう。姫乃って背が低い以外は万能だし」
「低くありませんが?」
「そうだねぇ。胸囲だけは一番なのにねぇ」
「だから揉まないでくださいっ!」
平原さんはもうごく当たり前にセクハラするもんな、
話が脱線してきたので戻そう。
「それで鍵になるのは鈴華だ」
「はえ? わたし? あ、パンケーキこっちです!」
いつのまに注文を……。しかも自分だけ。
「わたし、放課後お友達とこういう所来るの初めてなの! 前の学院の時は全然仲良くなれなかったから」
「そうだったんだ。鈴ちゃんも苦労してるんだね」
「鈴華の内情を偏った見方でしか知らない生徒も多い。だから俺と姫乃で鈴華を目立たせられないかって思った」
そして鈴華が良く見せることが片桐家に対しての復讐にもなる。
お前達の教育が鈴華を苦しめていたんだってな。
「それで僕やみなもさんを呼んだんだね」
「どうしても人数が足りないからな。それで何をやるかだ」
「この五人なら音楽って決まってるでしょ。あたしと和彦っちは吹奏楽部だし、姫乃はピアノ弾けたよね」
「まぁ嗜む程度ですが」
そういえば姫乃の部屋にピアノがあった気がする。
姫乃のピアノ伴奏は似合うんだろうな。指も長いし、美しい。
「えー、中学時代めちゃくちゃ上手だったじゃん。音楽の先生がびっくりしてたよ」
「小学校の時に少し弾いただけでコンクールで金賞取れましたからね。世界を狙えるって言われたんですが、強制的に辞めさせられました」
「なんでそんなことに」
「さぁ。同い年の姉もピアノをやっていたそうなので比較されたんじゃないですかね」
あっ。
パンケーキをニコニコ食べていた鈴華の表情が曇り、強くフォークを突き刺す。
「そーよ! わたしはピアノだけでなくいろんな楽器を習い事としてやったわ。でも全部上手くいかなかった! どうせわたしはポンコツなのよぉぉぉ」
「苦手なこと強制された鈴華さん。その影響で全部取り上げられた私。被害者はどっちなんでしょうかね」
この場合はどっちも何だろうな。
だからこそそのままではいられない。
「鈴ちゃんはボーカルやってもらおうよ。音痴だったとしても楽器音でごまかせるし、鈴ちゃんならフロントマンを担うルックスあるでしょ」
「そーね。どーせわたしは顔と体だけよ。ふんだ」
あ〜あ、鈴華がスネてしまった。
だけどその容姿が秀でているのは大きな武器なんだよな。
さっきから男女問わず、チラチラこっちの席を見てくるのは姫乃と鈴華の美貌のせいなのは間違いない。
「あたしと和彦っちがトランペット、姫乃がピアノ、鈴ちゃんはボーカル。何だか変わった演奏になりそうね」
「ああ、そのあたりは俺が上手く編曲するよ。そういうのはめちゃくちゃ得意だから」
「そうなんだ! 燐音っちやるぅ」
「うん、それは僕が保障するよ。燐音が本気出せば世界を狙える」
「言い過ぎだろ」
和彦が俺に耳打ちをしてきた。
「だって弟さんが急激に伸びたのって燐音が課題曲の編曲をやり始めてからでしょ。世界大会行けたんだから間違ったこと言ってないよ」
夜華と朝也が有名人であることを俺の知り合いでは和彦だけが知っている。
この口の硬さが親友所以でもあった。
「編曲はいいとして、楽器演奏は全然やってないぞ。時間的に覚えるのも厳しいな」
「だったら燐音はパフォーマーなんてどう? 振り付けやってたからダンスは得意でしょ」
「ああ、確かに。燐くんならいけそうですね」
夜華の練習に付き合ってたからダンスは得意な方だ。
姫乃と和彦はそれを知っているので呼応した。代わりに鈴華と平原さんはピンと来てないようだ。
楽器演奏よりはマシだし、それでやらせてもらうとするか。
「んじゃ鈴ちゃんの歌唱力チェックのためにカラオケでもいこー!」
平原さんがいると場も明るくなっていいよな。
「あ、パフェ頼んじゃったからちょっと待っていいかしら」
そして鈴華はほんと空気を読まない。そういうのも含めてこれからなのかもしれない。





