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042 仲違い

「疲れた……」


 結局今日も21時過ぎになってしまった。

 姫乃にはメッセージは送ったが既読はあっても返事はない。

 絶対怒ってるよな……。どうしよう。

 悩みつつも自宅マンションへ帰ってくる。ゆっくりと玄関を開けてただいまという声を上げる。


 なんだか全体的に部屋が暗いような気がする。そのままリビングの方へ行って分かった。いつもは明かりがついているはずなのについてないんだ。

 部屋に入って明かりをつけるとテーブルの上にはごちそうがラップに包まれて置かれていた。

 その目の前に一枚紙が置かれていて一言。


「うそつき」


 この胸に刺さる一言がとてつもなく辛い。

 とても言い訳させて欲しいんだけど……姫乃の立場からすればそんなの関係ないよな。

 鈴華が犯罪に巻き込まれろとは思ってないだろうけど、俺が鈴華の側に寄ることは良くは想っていないのは間違いない。

 姫乃はおそらく自室でもう休んでるようだ。今、声かける勇気は正直、今の俺にはない。


「まぁいい」


 朝一土下座しよう。そして明日こそ早く帰ってこよう。

 そう心に決めた次の日も。


 結局早くには帰れなかった。


「いったい俺が何をしたっていうんだ」


 高校生が巻き込まれるトラブルをフルコンプリートするつもりかあの女。

 今日もいろんなトラブルに巻き込まれてしまい解決するのに一苦労だった。

 おかげでさらに懐かれてしまい、日中も常に側に来るようになった。


「ただいま……」


 恐る恐る帰宅して扉を開ける。

 まだ出て行けとは言われていないが姫乃の機嫌をなんとかしないといけない。

 リビングは昨日と同じで真っ暗となっており、今日は晩ご飯すらなかった。

 これはいよいよもってやばいかもしれない。

 朝起きたらすでに姫乃は家を出ており、テーブルの上に弁当が置かれるのみだった。学校では当然鈴華が付きまとってくるので姫乃と話すことはできない。

 今日は一度たりとも姫乃と話をしていない。


 やはり話をするしかない。まだ20時だ。さすがに寝てはいないだろう。

 俺は姫乃の部屋へと出向く。

 こんこんとノックをする。


「姫乃。話がしたいんだ。出てきてもらえないだろうか」


 反応はない。でも気配はあるし、俺が声をかけた瞬間バタバタと音がして布団を被る音が聞こえた。

 中にはいるし、意識もしている。姫乃に逃げられるのは心が痛い。

 でも向き合わないといけない。

 それに……。


「なんかちょっとだけ腹が立つ」


 姫乃の機嫌が悪くなる気持ちも分かるけど……俺の苦労も察して欲しい気持ちもある。

 別に俺は意図して鈴華と仲良くなってるわけじゃない。言えば姫乃の義姉がアホな道に踏み外さないように自分を犠牲にしてるのに不愉快な気持ちにさせられるのは辛い。

 でも、これを口で言おうものなら大喧嘩になりかねない。


「はぁ……。悪いけど部屋に入るぞ」


 ここで引き下がるわけにはいかないので姫乃の部屋に入ることにした。

 明確な拒否の声もない。なら入ってもいいだろう。

 部屋に入ると部屋は明るかった。やはりまだ寝てはいなかったようだ。

 奥に置かれたベッドの上で全身を布団でくるませて隠れている姿があった。


「姫乃、起きてるんだろ。顔を見せてくれないか」

「……」


 もそっと掛け布団が動くが返答はない。

 返事をしてくれると信じて少しだけ待つことにした。

 もう一度もそっとした動きを見せて姫乃の声が出てきた。


「燐くんなんてもう知りません。あの人とイチャイチャしてればいいんです」


 これはだいぶ怒っていると思うし、投げやりになっている気がする。

 俺は別に鈴華とイチャついたつもりはない、むしろ付きまとわれているぐらいだ。

 本当にイチャつきたいのは……。それを分かってもらうには話すしかない。

 布団をひっぺがすか。だが意固地になりそうだ。姫乃は頑固なところがあるからな。

 どうしたものか……。しかしあそこまで全身を掛け布団で隠されてしまうとどうにもできない。

 全身……。ん? よく見れば片足だけが掛け布団から出ていた。まさに頭隠して足隠さずといったところか。


 こうなれば姫乃が喜ぶスキンシップをはかるしかない。

 俺は姫乃の足首を掴んで軽く持ち上げる。

 無言で逃げようとバタバタ動くが俺の力で逃げられるはずもない。動く足の裏に向けては俺は指を一本ツーとなぞった。


「あひゃん!?」


 姫乃から出たとは思えない甲高い声。

 やっぱり姫乃はこういう声を出してる時が一番楽しそうだ。もっと楽しくさせてあげないと。

 そんなわけで五本の指を使って姫乃の足の裏を蹂躙する。


「きゃはははっ!? ちょ、燐くん、やめっ! あしのうらぁっ!」

「やっぱり姫乃は笑った方がいいと思う。暗い顔は似合わないよ」

「分かったからやめてぇぇっ! きゃははっ!」


 暴れ回ったおかげで布団が吹き飛ばされる。すかさず、姫乃の上にまたがって姫乃の大好きな脇腹マッサージでとどめを刺す。


「あああああっダメダメダメ! あははは、そこはダメなのぉぉぉ!」

「許してくれよ姫乃!」

「ゆるす! ゆるすからぁ。だめぇぇっ!」

「……」

「なんでやめないのぉぉぉ!」


 可愛いから。

 もうちょっとだけこの乱れる姿を楽しみたい。

 暴れる姫乃を堪能した後、へとへとになった姫乃とようやく対面することになる。


「まったくもう……燐くんはほんと何考えてるんですか」

「ごめん、こうでもしないと話せないと思って。っ!」


 少し息を切らした姫乃が布団の上で可愛らしく座る。俺もつられるようにベッドの端にちょこんと座る。

 学校にいる時はきりっと髪型もまとめているのに寝る前だったからか長い金色の髪を流していた。

 そして服装は例のセクシーなネグリジェを着ており、下はブルーの下着姿を表していた。

 部屋に誰も入れる気がないとできない格好だ。

 豊満な胸の谷間をつい見てしまうわけにはいかない。俺は姫乃の瞳に合わせるように見た。


「あ……」


 姫乃の目尻には涙を流したような跡が残っていた。

 泣かせてしまった。そう思うとつい、俺は姫乃の手を引っ張り抱きしめていた。

泣いているお姫様に出来ることは。


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