041 トラブルメーカー
「燐、そんなわけで今日も見送りをお願いするわ」
「朝はタクシー使ってるんだろ! 帰りもタクシー使えばいいじゃねーか」
「そんな毎回タクシーを使っていたらお金がいくらあっても足りないわ」
「正論だが道を覚えればいい話だよな」
今日も1日、この片桐鈴華に振り回された。
学校内でのお世話係はまぁ100歩譲っていいとして何で学校外まで付き合わなければならないのか。
「何で葛西ばっかり……」
「鈴華ちゃんと一緒なの羨ましい」
クラスの男子からのやっかみがひどい。鈴華の見た目が姫乃レベルに優れているのが良くなかった。
「だって燐は何だかんだ付き合ってくれるし、……話しやすいし」
幸せか不幸が俺はこの超絶美少女に懐かれてしまったらしい。
前までの俺だったらこう上手くいかなかっただろうけど姫乃で慣れたせいもあるのかもしれない。
正確には片桐の女に対する対応の仕方を熟知してしまったのだろうか。
だが今日は断らなければならない。今日帰って姫乃と飯を食べるんだ。
「俺は今日は帰らせてもらう。まぁ、今度また付き合ってやるから女子生徒と一緒に……あれ、鈴華」
いつのまにか鈴華が姿を消していた。
そして気づけば遠く離れたところで誰かと話している。同級生ではない、少し怪しそうな壮年の男性だった。
嫌な予感がして近づく。
「燐っ!」
鈴華が振り返って手を降って俺を呼ぶ。
そばにいた怪しそうな男は俺を見て慌てていた。
「この人がね。1時間ホテルでお茶したらお金をくれるって言ってるの!」
「ぶふっ!」
「バイトしようと思ってたけどこれならすぐお金稼げそう! タクシー代もこれで安心ね」
この女。何言ってんだ.それよりまぁいい。俺は怪しい男を睨みつけた。
「高校生って分かって言ってんなら悪質だよなぁ。警察行くか」
「ひいいっ!」
俺が睨んでやったら怪しい男はあっという間に立ち去ってしまった。
鈴華が惜しそうに眺めていたがまさかこんなことも知らないというのか。
「もう! 男性が苦手なわたしのためにお話に付き合ってくれるって言ってたのに」
「間違っても君はあーいう系には手を出すなよ」
「何でよ。あんなに優しそうな人がわたしに何するって言うの」
なんて純粋無垢なお嬢様なんだ。姫乃なら絶対引っかからないぞ。
俺はスマホを取り出して今あったことの詳細を事細かに説明した。いや、せざるえなかった。
すると鈴華の顔が真っ赤になっていく。
「う、嘘。あれが……そうなの!?」
「制服姿の女の子を狙うとかマジでえぐいな」
しかし今の時代にあれに騙される子がいるとは……。俺が側にいなかったら大騒ぎになってたぞ。
鈴華はまだ顔を赤くして震えていた。高飛車な性格の割に何というか世間知らずというか。これがお嬢様なんだろうけど。
まぁ狙われる理由も当然だ。片桐家の威光を抜きにしても片桐鈴華の容姿は優れている。
学園のお姫様に匹敵するほど美貌と黒髪ロングは絶対的な美しさを持つ。
肌も綺麗で体つきも魅力的でなんだよな。胸も大きく、手足も理想な細さを持つ。
姫乃より身長が高い分、胸の大きさはやや控えめか。たた全体的なバランスを考えたら鈴華の方が理想的って。何で俺は比較してんだ。バカか。
「お金が欲しかったとしても自分を大切にしろよ。鈴華くらい可愛けりゃ……もっとべつの方法があるだろ」
モデルとかそういう方向性が一番向いてるかなって思う。
「見た目だけなんて……嫌」
鈴華はぼそりと呟いた。容姿の良さは自覚しているようだが、気にいってはいないようだ。
姫乃も容姿の良さに苦労してたから良いなりの悩みがあるんだろう。最大限に生かす妹の夜華とは違うのかもしれない。
鈴華の性格の一片を見えた気がした……と思ったらすたすたとあらぬ方向へ歩いて行く。
「どこへ行くんだよ」
「気晴らしするの。嫌なことあった時は気持ち良くならなくちゃ」
「俺は予定あるから今日は帰るぞ」
「ええ、分かったわ。燐がいなくても遊べるってとこ見せてあげる」
そう言って鈴華はささっと立ち去ってしまった。
昨日はずっと付きまとわれていたのに正直拍子抜けしてしまう。
今日は絶対帰ってきて姫乃とご飯食べるって決めていたしちょうどいいか。
せっかくだしケーキでも買って帰ろう。姫乃が喜んでくれたらいいな。
寄り道して帰ろうとして一時間……、とんでもないメッセージが入ってきた。
『燐、この人についていけば気持ち良くなるお薬がもらえるんだって、楽しみ! あなたにも分けてあげるわね』
メッセージとともに送られてきたそれを見て、血の気が引く。
女性であったのが明らかにその筋ではない人間が側にいたからだ。
慌てて着信を送った。すぐに鈴華とつながる。
『あ、燐! もう~すぐに電話してくるなんて~燐も欲しかったの。えっとね』
「いいからそこで待ってろ! 絶対に俺がそこに行くまでどこにもいくなよ、いいな!」
何でこう常識的な行動からかけ離れたことをするんだ。くっそ~!
あの子は一人にしてはいけないのかもしれない。
家族を放っておけなかった燐音が放っておけるはずもない
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