026 傲慢だった
「燐くんに助けてって言いますけど、誰が燐くんを助けるんですか? 助けてもらってばかりであなたは燐くんにしてあげたりしたんですか」
「お兄ちゃんはヨルカが成功したら喜んでくれて、ヨルカの話を嬉しそうに聞いてくれた」
「じゃあ夜華さんは燐くんの話をいっぱい知ってるんですよね。同じだけ燐くんから話を聞いてるんですよね」
「それは……」
話したことがあるわけがない。
俺の学校の話なんてしたことないからな。
でも俺は兄貴の学会で発表する教授の名前や夜華のアイドル仲間のメンバーの名前、朝也の所属しているチームのメンバーやコーチの名前を全て知っている。
俺の家族は自分が一番だと思っている人種だ。人の話なんて覚える気がない。
「燐くんがいなくなった理由、まだ分らないですか? 家族への愛情を注ぎ疲れてしまったんですよ」
「……え?」
「ずっと助け続けてきたのに燐くん自身を誰も助けてくれなかった。もう少し燐くんをちゃんと見てあげればあなたの側からいなくなることなんてなかった」
「そんなの……言ってくれれば!」
「燐くんはあなたの辛い時や泣きたい時に察して助けてくれたそうじゃないですか。なんで……実妹のあなたがそれをできないんですか」
それは実際に夜華が言った言葉だ。
家族だといっても全てを察することは難しい。言わなきゃ分からないことだってたくさんある。
だけど。
「燐くんはちゃんと言ったと思いますよ。でもあなた達は燐くんには興味がないから覚えていないだけです。燐くんからたくさん恩恵を受けてるくせに燐くんのことは何にも考えていない」
姫乃の言ってることは全て正しい。
「ま、燐くんに直接会いに来ただけあなたはマシだと思います。でも……あんな助けてなんて言う時点で燐くんのことを何も分かっていない」
姫乃は夜華を睨み付ける。
「燐くんを傷つけるような所に返すわけにいきません。私から燐くんを奪わないでください!」
姫乃のその言葉が本当に嬉しかった。
さっき夜華にいった通りで俺は別に実家の家族が嫌いなわけじゃない。
むしろ大好きで支えたいと思ってるし、それで家族が成果を上げるならそれが一番だと思っていた。
でもこのまま支えるだけで大人になった時に俺は何も残らない。
その時俺は何のために生きているのか。多分分らない。そんな未来が怖くてたまらなかった。
だから家出をしたんだ。そして同じように家族のことで苦しむ女の子と出会った。
姫乃との家族生活は本当に楽しくて、愛情を注げばちゃんと愛情を持って返してくれる。
俺の望んだ家族生活を送れているんだ。
だから……俺は。
「夜華。俺は帰らない。今、俺にとって一番大事な家族は……姫乃なんだ」
姫乃さんはちゃんと分かっている。
さてどうなるか。
次のお話です。
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