転校生君と兄妹デート3
再びゲームコーナーに戻ってきた僕達。
さっきより人が多い気はするけど、もう少しだけ何か別なものをしようと2人並んで歩いて見て回る。2人で手を繋いで歩くのは兄妹であっても、年齢的に恥ずかしいけど、響は堂々としてるし僕がおかしいのだろうか。
「ひびちゃん、これは?いっぱいお菓子が積んである…台みたいなのが押し出すように動いてるけど」
「100円を入れてそのアームを動かして下に落ちてるお菓子を掬い上げる。その後にお菓子をうまく台に落として動く台に押してもらい、受け取り口にお菓子を落とすんだよ。かなくん、やったことない?」
「多分。ひびちゃんの記憶に僕がやった記憶がなければないね」
「そうなんだ。珍しい。お母さんはなぜかこれにはまっているんだけどなあ」
「まあ母さんの好みってよく分からないから……」
喜々として学生服を着たり、お子様ランチが大好きだったり、かと思えば華道にはまっていたり、釣りは好きなのに魚は苦手だったり。よく分からない。
いや、もしかして僕達に合わせようとして、こどもが好きなものを好きになろうとしているのかな?
「お母さんのことは置いておくとして、かなくん、やってみる?」
「そうだね。他にも色々してみたいけど……」
「お金使い過ぎたね」
「意地になりすぎたね……」
二人してはあと溜息を零す。
テンションの乱高下で疲労感が強いけど、妹とこうして遊ぶなんて小さい頃以来だから楽しいのは楽しい。
結局、お菓子はほどほどに取ることができて、なぜかあったワニを叩くゲームやメダルを使ったゲーム、そして
「プリクラ?」
「デートの定番だよね!」
「ええ…?古いイメージあるけど、みんなやってるのかな?スマホとかの加工で良くないって思うけど」
「かなくんはそういう所本当につまらないからやめよ?やってる人いなかったらそもそも機械も配置されないよ」
「それもそっか」
「ほらほら、かなくん。入って入って!」
「わわっ、引っ張らないで!」
最後に、引っ張られて無理矢理に入らされる。よく分からないままにポーズを取らされてよく分からないまま終わっていた。なんだったんだ。
「ひびちゃん、満足した?」
「うん。友達に見せてお兄ちゃんを自慢するね!」
「それはやめてほしいなあ」
「かなくんの分を渡しておくね。スマホに貼ってもいいよ。自慢の妹だって紹介しても」
「しません。まあでももらっておくよ」
小さい頃にやったうさぎ耳やら、むぎゅっと頬をくっつけたりやら。ちょっと見せるには恥ずかしいよ、これ。
響が満足そうな、満面の笑みを浮かべているからまあ良しとしよう。
2人で話していると、誰かが意志を持ってこちらに近寄って来ているようで、それを見つけた響の手がギュッと握られているのが感じられた。というかいつの間に握ってたの、僕の手。さっき放してなかったかな。
「あの……もしかして中山君?」
「はい?」
響が見ている方を見ると、そこにはいつか見た人達がいて、自分の眉が上がったように感じる。無意識下で驚いたのかと自分に驚いた。
「あれ、新谷さん達もここに来たんだ?」
「う、うん……みんなで遊びに……ほら、メッセージでも言ってたよね」
「確かに。朝返信した覚えがあるよ」
何故か不安そうにしている新谷さん、僕を睨む上村さん、響と僕を交互に見る渡貫さん、響をジッと見る上白沢さん。赤羽君はいつも通り、上白沢さんを……あれ、僕を見てる。
そんな5人が話しかけてきたのだけど、なんだろう?居心地が非常に悪い。
隣で手を繋いでいる響に目を向けると警戒している様子で、手にも力がかなり入っているし、なによりあまり良くない雰囲気。
「中山、大変だな!」
「え、赤羽君、何がなの……?」
ニカッと笑って赤羽君がサムズアップしているのに困惑する。そんな赤羽君を横目に渡貫さんがこちらに声をかけようとして、上村さんがこちらにズイッと近づいてきて思わず一歩下がってしまった。
「なかやん、その子は誰?もえぴーは知ってる?」
「知らないけど……」
新谷さんが知らないのは当たり前なんだけどなあ。
下手なことは言わないほうが良さそうなのは上村さんの表情でわかる。
隣にいる響に小さく手を引っ張られて、ヒソヒソと話し始めるのにあわせて耳を寄せる。
「(お兄ちゃん、この失礼な人達はなに?なんで私達睨まれてるの?)」
「(ただのクラスメイトだよ。この前あった課外活動で一緒の班だった。睨まれるような事に何も思い当たることがないんだけど……。なんだかよく分からないけど誤解されてるっぽいし、ひびちゃんのこと紹介してもいい?)」
「(うん。そうしないと後でお兄ちゃんが困るもんね)」
ヒソヒソと話していると上村さんの顔が険しくなっていくのがわかる。いや、あの……なんでそんなに怒っているんですか。
響も眉を寄せて困り顔をしている。
「そんなに仲良さげにして……なかやん、どういう関係なの?答えるまで逃さないかんね!」
「あの、上村さん?うちの妹が困ってるからその辺にしてもらえませんか」
「妹だろうとなんだろうとうちの……!ん?んー?今なんて言ったん?」
「妹だよ。中山響。ほら、顔も身長もあんまり似てないけど目は似てるでしょ?」
「身長は似るものじゃないと思う」
「ひびちゃんは黙ってて」
妹と紹介すると安堵したように誰かが息を吐いたような気がした。
妹は上村さんに不快そうな目を向けて、新谷さん達は感情ののらない目で順番にみていく。最後の人、上白沢さんを見た後、にっこりと笑ってお辞儀し口を開いた。
「はじめまして。中山響です。見ての通り仲の良い兄妹の妹です。先輩方が何を思い、考えているかは分かりませんし、兄は優しいので怒ったりはあまりしないとは思いますが」
そこで話を区切る響を見ると笑みを消している。そして、本当に不愉快そうな苦い表情で口を再び開く。
「兄が誰と居ようが人間関係に口出しできる権利なんて先輩方にないので、次からは突っかかるのを止めてくださいね?」
恐らくは上村さん相手に告げた話だとは思うけど、みんなへの忠告だろうか。渡貫さん、上白沢さん、赤羽君はその辺わかってくれてそうだけど、新谷さんはここ数日の距離感のせいでよく分からないな。
「上村さんは少し……いや、かなりね。突っ走りすぎよ。ごめんなさい、止められていたら良かったのだけど」
「ん、こっちが悪い。ごめん、なかやんとなかやんの妹。りくがお詫びに犬になる」
「りぃ、今の状況で冗談を言うのはどうかと思うぞ?」
「冗談?本気だけど」
「りぃ!?……中山、えっと、響か。俺の友達がすまなかった」
渡貫さんと上白沢さんがそれぞれ響と僕に謝り、赤羽君も上白沢さんに絡みつつ響に謝罪する。
意外だったのか響は毒気を抜かれたような表情で3人を見ている。
上村さんもバツが悪いと怒られた犬のようにしゅんとして頭を下げるし、新谷さんも頭を下げるしで多分周りから見たら変な光景だろう。思いっきり目立ってる。
「……わかってくれたらそれでいいです。かなくん、そろそろ帰ろ?」
「そうだね、ひびちゃん。ごめん、僕達そろそろ時間だから帰らないと。またね、新谷さん、みんな」
待ってという声が聞こえたような気はしたけど無視して、荷物を回収するためにロッカーへと向かう。響は何故か腕に抱きつき、後ろを見ていたようだけどすぐに前を向く。途端に、メッセージの通知音がなっているようだけど、見るの怖い。
「かなくん、今日は本当に帰ろ?なんだか気分が萎えちゃった」
「そうだね。あ、ちょっと待って。母さんからもメッセージ入って……今日は父さんのところに行くから家にいないってさ」
「え?本当に行ったんだ。お母さんもソワソワしてたし、たまには夫婦でゆっくり過ごしてほしいな。後でメッセ入れとこーっと」
ご飯の心配もいらないみたいで、冷蔵庫に入っているみたいだし買い物もいらない。
回収したネコのぬいぐるみは響に持ってもらい、他の荷物は僕が全て持って2人並んでたくさん遊んだショッピングモールを後にした。
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「はあ……嫌われたかな……」
「少なくとも妹さんには嫌われたわね。アナタは悪くないけど、多分一括りにされてるから。誰かさんのおかげで」
「な、なんだよぅ……うちもわかってるからあんまり言わないでー……」
「なかやんの事だから、許してくれる」
「根拠が無いのに胸を張るりぃかわ!」
「小さいとか思ってる?ぶっ飛ばす」
「りぃ!?」
「それにしても、さっきのはうちらに対する挑発……?」
「かもしれないわね。私はともかくあなた達二人には効果抜群だったみたいだけれど」
「え?あ、わ、私はその…!」
「ふふ、分かりやすい反応ね」
いつも読んでいただきありがとうございます。




