転校生君と兄妹デート2
今回はいつも以上にかなり短いです。
「お腹いっぱいだね」
「そうだね」
返却口に食器を返却して、席に戻り二人して自分のお腹をポンポンと叩き、これ以上ないほど満足したことをアピール。お腹いっぱいだからちょっとだけ休憩。
なんだかよく分からないけど周りに見られて……いや、こんな休日に制服で、しかも地元の違う学校の物を着ている男女なんて普通に目立つ。妹の場合は着ているのが中学の制服だけに、高身長かつ隣にいる男が若干背の低い高校の制服を着たやつだと、その、こう……
「かなくん、ジロジロ見てなに?なにか気になる?」
「母さんと同じだな」
「え?」
なんでもない、そう溢して次の行き先について話す。
響は追求しようとしていたけど諦めて、色々と案を出してくる。
ゲームコーナーに本屋に小物が売っている店に映画。なんでも揃うなんてすごいなー。
いや、なに。コスプレ感すごいなあとか思ってないし、本当になんでもないよ。無いったら無いからこっちを半目で見てこないでください。普通に怖い。
「こういうところに併設されてるゲームコーナーなんて、そんなに楽しめるかな?」
あんまりゲームセンターとかそういうもの自体に興味がないんだけど、こういうところに併設されてるのはこども向けのイメージがある。
疑問に思いつつ響に問いかけると、
「意外と楽しめるよ?」
との返答。ゲームセンター初心者を舐めるんじゃありません。何をすればいいかとかわからないし。
だから僕たちが楽しめるなんて思わな──
「ひびちゃん、待って!後1回だけ!」
「ちょっ、かなくん!そんなにお金使ったら……」
「絶対取るからな、おまえ!」
「おまえって……。かなくん、そんなにアレほしいの?」
「絶対ほしい!」
「あんまりに成功しないからって意固地になってないかな……」
──かなり楽しんでる。
UFOキャッチャーにすらハマる僕。お金が吸い取られていくという意味でだけど。
どこか他人事のように内心では考えているけれど、絶対あのぬいぐるみを取ってやるという全身から湧き立つ熱に浮かされて自分を止められない。
そんな僕を呆れたように見ているであろう響も、なんだかんだで隣にいて応援はしてくれる。
あまりに入れ込んで騒いでいるから、なんだなんだと家族連れが集まっていたのは後で気づいたし、店員にも怒られたけど。
「「やったー!」」
苦節27回目。なんとか取れたぬいぐるみに喜び、ハイタッチする兄妹。まわりの人にもおめでとうと拍手つきで言われて顔が火照る。独占して申し訳ない……。
よく考えたら店員さんに助け求めても良かったのではないか。なんて考えたけど、変なプライドが邪魔してつい頑張ってしまった。次回までにUFOキャッチャーの練習したいなあ。
「そんなにネコのぬいぐるみに執着する人もなかなかいないと思うなあ、私。かなくんのお部屋に飾られると思うと似合わなさすぎて……ぷぷ」
「ひびちゃん酷い……って言いたいけど、そうだよね。僕の部屋には元々飾る気ないけど」
「え?じゃあ誰かへの……わかった、彼女さんだ!」
「まあ、そうだね。プレゼントしようと思ってたよ」
「えっ」
まさか肯定されるとは思っていなかったのか、ポカンと口を開ける響。1秒、また1秒と時間が経つにつれ、顔色が悪くなっているのは気のせいだとは思うけど、なんだか落ち込んでいるのは多分見間違えてはいない。
「かなくん、彼女いたんだね……私が知らないって事は中学で?お父さん何も言ってなかったのに。まさか、私やお母さんから離れないよね……」
小声のつもりだろうけどブツブツ言ってるの全部聞こえてるよ、妹さん。聞こえないフリしといた方がいい?
流石に放置もできないので響の肩をトントンと叩き、現実に引き戻す。
「はい、ひびちゃん」
「ふえっ」
自分が頑張って取ったぬいぐるみを渡すと、意味が分からずきょとんとしている妹は次の瞬間には慌て始める。
「おにいちゃん、どうして」
「今日はデート、なんでしょ?だからひびちゃんにと思って」
「……彼女さんは?」
「いると思う?」
黙らないでほしいんだけど。
苦笑いで見ていると、響は徐々に笑顔を取り戻していく。
「そっか。妹の好感度を上げに来ただけなんだね!良かった……私が知らない、中学時代の彼女さんの所に行っちゃうのかと思った」
「どうしてそういう発想になるのかな。お兄ちゃんとしては妹の頭の中が気になるよ」
「……心配になるんだからね。4年も離れてると、私やお母さんも知らないお兄ちゃんがいて、不安でいっぱいになるんだから」
そう言われると何も言えなくなるから、強引に話題を切り替えるために響の手荷物を引っ手繰る。
「流石に荷物多いから1回ロッカーに預けるよ。……もう少し遊ぶでしょ?」
それならかさばるようなぬいぐるみなんて取らなきゃいいのにと言われるだろうけど、アレはまあ。妹がネコ好きなのは知ってたし、どうせあげるなら自分で取ったぬいぐるみにしようと思って。
「おにい……かなくん。うん、まだ少し時間あるもんね!」
まあ空気を読んでくれただけだとはわかるけど、その笑みは嘘だとは思いたくない。
かさばり少し重くなった荷物を両手に持ち、ロッカーを探し歩いて一旦預けることにした。
いつも読んでいただきありがとうございます。




