転校生君と課外活動1
今日はバーベキュー日和の晴天……なわけもなく、昨日スマホで見た天気予報通り気分が沈みそうな曇天である。
わが校はちょっと変わっているらしくて、そもそも高校生活が始まったばかりで交流と称して学校外に行き、あまつさえバーベキューなんてするところは多分ない。
お金持ちの通う学校なら分からなくはないけど、むしろそういった学校ほど学内で交流会をするだろう。
そんな変わった行事でも勿論、僕は楽しみにしている。僕以外の生徒が仲良さ気に騒がしくしてくれるのは授業以外なら大歓迎だ。
仲良さ気にしている輪の中に僕はいらない。関係を深くする気はないし、上辺だけの関係性なら僕だって喜んでなるけど……
「中山、りぃが遠い!」
思考を飛ばしている間にバスに乗り、窓側に座っていたが、隣の男子がうるさい。同じ班になった赤羽君は唯一の男子ということもあり、僕が上白沢さんの代わりに隣にいる。男子さえ上白沢さんの隣に居なければうるさくならないと思ってたんだけど……
「赤羽君。隣の席をよ〜く見てご覧?大層ご立腹だよ、【ちみ姫】さん」
オドオドするタイプのなんというか母性?父性?をくすぐる系女子、ちみ姫と愛称で呼ばれているらしい子がこちらをオドオドしながら見ている。
怒っているような気はするが、僕は超能力者や精神科医とかではないので内面まではわからない。でもそう言わないと赤羽君、止まらなさそうだからさ……
「りぃ以外はどうでもいいな!」
「ぶれないね、キミ。でもその上白沢さんもだ、結構怒っているみたいだよ」
「なら大人しくする。中山も黙ろうな!」
「いっそ清々しいよ、キミ。ある意味尊敬するよ」
「褒めるなよ、りぃの為なら良い男になりたいからな!」
「頑張ってね」
欠片も感情を籠めていないけど、赤羽君は気にしない。林道君とは違う意味で面白い人間性をしてるよね……
てきとうな会話を2点3点していると、前の席に座っている新谷さんと上村さんも盛り上がっているようだった。恐らくいつもの2割増しくらい上村さんのテンションが高い。新谷さんはタジタジのようだ。
他のクラスメイトも仲良く隣と話したり、僕みたいに外を興味なさげに見たりしている。
僕は景色が変わるたびにテンション上がるんだけどな。上村さんほどではないけれど。
「わかってるよな?」
外の景色を見ていると後ろから多々良君が話しかけてくる。何がわかっているのか?
「…ごめん、なんの話?主語と目的語がないとわかんないよ」
「課外活動のことだ。な、ぜ、か!お前たちの班と合同になってしまったが?美山さんと川瀬さんに迷惑かけるなよ。勿論俺達にもだ」
「うーん、言われなくても僕は隅の方にいるつもりなんだけど……あ、お肉は頂戴ね。お野菜中心でもいいからさ」
多々良君はなんでか僕に対しての圧が強い。どうでもいいけど。多々良君の隣に座る津田君はなんともいえない表情だ。
「そうだな……。かな……中山、課外活動中は俺と一緒にいるか?」
「うーん、それもいいかもね。僕は静かにすごしたいから津田君には悪いけど、あんまり交流しないよ。多々良君もそれなら文句ないでしょ」
「津田が見てくれるなら、それでもいいな。美山も安心だろ」
「じゃ、そういうことでよろしくね、津田君」
色々と言いたいことはあるんだ。まあ良いんだけど……。
津田君の誘いも別に悪くはない。しつこくされなければまだいい。林道君が川瀬さんと話せるチャンスも増えるだろうし。
なんて思いながら前を向く。
担任の八宮先生があれこれ話してるけど耳には残らない。多分に面白い話ではあるのだろう。興味はないけど。
なんだかやり取りに疲れて窓側にひじを置いて、頬杖(角度強)をついて無理矢理に外を見る。変な体勢だけど、いい感じに体に痛みが出て疲れが取れる気がする。退屈だし、この後のことを考えると気も重いから痛みでもなんでも、刺激がないと辛い。
そんなことをしていると、前に座っている新谷さんと上村さんが椅子の間からこっちを見ていることに気がついた。
「んと、何かな?」
「もしかして場所変わってくれるのか!?りぃの近くにいけるなら嬉しいぞ!」
隣の赤羽君のテンションが高い。通路を挟んだ向かいの【ちみ姫】さんともう一人が目をパチクリさせてこちらを見ているのが少し面白い。他の席もうるさいのがそこそこいるけど、赤羽君は目立つものなあ。
【ちみ姫】さん達に向けて顔の前で片手を上げて、ごめんねアピールをしておく。
「バスが動いている間はダメだよ、赤羽君?」
「じゃあ新谷!止まったら代わってくれ!」
「赤羽っち、うちらそんな話をしたいわけじゃないの。なかやんに言いたいことがあんの!……赤羽っち、何その目」
「お、おう…上村にしてはなんだか……いや、なんでもないぞ」
赤羽君が叱られた犬みたいにしょんぼりした表情になるし、肩を落としている。なんだかかわいそうだと思う。
「それで、僕?」
「そう!なかやんはさあ。うちらと思い出作りに来てんだってこと忘れてない?もえぴーとかはさ、今日をほんとーに楽しみにしてるわけ。それこそ、あやめるとかみーなとかも。どーして、勝手に外れようとしてんの?」
笑顔で話しているはずの上村さんの目が笑っていないような気がする。どんな表情だと思うかもしれないけど、なんだかゾクッと寒気がする。
隣の赤羽君も妙な気配に落ち着かない様子だった。
「どうして、ね。僕が動くとみんなに迷惑掛かっちゃうから端の方に居ようと思っただけだよ。津田君に付き合ってもらうつもりだし、思い出作りも」
「多々良のこと気にしてんの?放っておけばいーじゃん」
「……多々良君だけじゃないよ?勝手に合同でやりますとかでクラスの人気者を取った班の男なんて、嫉妬や怒りの感情を向けられてもおかしくはない。まあ赤羽君はいつもあんな感じだからスルーされてるけど」
僕もキャラ変して他のクラスの人に一途になれば変わるんだろうね。赤羽君みたいな純粋な矢印にはならないだろうけど。なんなら僕、その後に関係を突然切りそうで……そうなると女子からの印象最悪になりそう。
しかし、本当に悪い意味で注目されてるなあ。これなら仮病使ってでも休むべきだったか。
「なかやん、普通にしてなきゃうち、怒るからね」
「もう既に怒ってない?」
「怒ってないかんね!もえぴー、なかやんのことちゃんと制御しなよ?」
「え!……中山君、その」
新谷さんは急に話を振られて困惑してたみたいで、何かを言うのに少し時間がかかった。考えついた言葉を発する前にバスが止まる。
「目的地についたぞ。男子、先に降りて準備を手伝えー。それぞれの場所についてはプリントの通りだからな。女子は食材を手分けしてもらってきてくれ」
先生が発した言葉を皮切りに、それぞれ動き始める。新谷さんも上村さんも口を閉じてそれ以上僕に対して何かを話すことはなかった。
安堵した僕は通路側に座る赤羽君に声をかけて、外に出ようとする。
「赤羽君、行くよ」
「りぃの為に頑張りますか!中山、俺らが一番を取るぞ!」
「そういうのじゃないんだけどなあ……」




