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転校生君と課外活動2


赤羽君とえっちらおっちらバーベキュー用の機材を運ぶ。津田君や多々良君、林道君も合同班の為に炭やら着火剤やらを一緒に運んでくれている。

ロケーションって言うのか、雰囲気は大分いい感じ。近くには池、緑あふれ…もしないけど、自然に囲まれた良いところ。先着していた他のクラスも楽しげに準備していて、自然溢れるところ静けさも!と、求めていた僕には残念だけど、これはこれで非日常感があって良い。ただ、天気だけは今ひとつ。曇り空で今にも雨が降りそう。予報では持ち堪えるらしいけど。


結局、5班に分けるのはやめることにした先生。他クラスとも相談して基本2班一組の形を取ることにしている。

とは言うものの別に他班とも遠くはないため、形だけにはなるのだが。

赤羽君はやたらと張り切っていて、僕はそれに引っ張られる形だ。りぃ……上白沢さんに良いところを見せたい、その一心で頑張るのは大変よろしい。その気持ちはよくわかる。

僕だって響や母さん、父さんにも良いところは見せたくなるし。ずっと情けない姿しか見せてないけど。ただ、僕は巻き込まないでほしいなあ。



「よしよし、俺達が一番に準備ができているな!りぃが喜ぶぞー!」

「赤羽君。一応言っておくけど、林道君や津田君達が頑張ってくれているおかげでもあるんだからね。後でお礼言っておきなよ?」

「おう、勿論だ!中山もさんきゅっ!」

「どういたしまして」



あまりにも嬉しそうに言うものだから、困ってしまう。

一人だけのために頑張れる。でも他の人への感謝も忘れない赤羽君は眩しくみえた。坊主眼鏡だからじゃないよと自分の中で意味のわからない念押しをしておく。

林道君はひぃひぃ言いながら僕らの補助をしてくれて、津田君と多々良君は他の班にも手助けに行く。



「な、中山も、はあ……赤羽も、元気だな……?本当に部活入ってないのか?」

「りぃが居ないところに興味はないな!マネージャーもやらないって言ってたし、運動部は特になー」

「僕がそういうのに興味あるように見える?僕が元気なのは赤羽君が9割方頑張ってくれてるから。上白沢さんも逞しい赤羽君を見て喜んでるよ!後で僕の分のお肉分けてあげるね、赤羽君」

「中山……!中山っていいヤツだな!」

「え、餌付け?おいおい、騙されてるぞ赤羽ー」



騙すなんて心外だな、なんて思ったけど林道君も多分本気では言っていない。

そんなこんなで雑談に興じながら津田君多々良君の様に他の班への手伝いや火起こししていると、女子群が食材を持ってやってきていた。


どこかで下拵えをしてきたのだろうか、後は焼くだけになったそれらを慎重に運ぶ人、野菜の入った袋をブン回す怖いもの知らず、ずっと小言を言い続けてる委員長、手持ち無沙汰で申し訳無さそうなのが数名、何故か混じってる他クラスの男女。後はやけに目立つ川瀬さんとお隣さん、それと他クラスの女子。

なんだこの大所帯?と自分と一緒の準備組に目を向けると、林道君も多々良君というかこの場にいるクラスでは僕と津田君以外、あの目立つ3人を見て目をキラキラさせている。あの3人の扱いはアイドルか何かかな?学校内で有名らしいし。

まあ僕は興味ないし食材しか見えていない。お腹空いたよ。


いや、でも赤羽君は上白沢さんしか見えていない……待って、上白沢さんがどこにいるか僕わからないんだけど?なんでそんなに自信を持って見れるのよ。キミが怖いよ僕……。



「なるほど、あれが椎名朱璃。あの噂、本当なのかもな」

「知ってるの、津田君?」



椎名朱璃。椎名という名前に聞き覚えがあったような気がしたが、あれか。お隣のクラスに変質者よろしく覗きみたいなことをした時に知らないっていったら、女子にびっくりされたやつか。

あの人、なんだか髪色が翠に見えるような錯覚を起こすけど、普通に黒髪だよね。自信ないけど……。それと、まあ一部分の主張が激しい。あれは目に毒なのでサラシでも巻いて潰しておいてほしい。ああ、うん。見なけりゃ問題ないね、見なけりゃ。



「中山は知らないか。入学式から3日間で大量の恋文に呼び出し。1年男子の殆どと2年3年の彼女いない男子を振ったらしい。真偽の程はわからないが、中学時代も似たようなことがあったらしいから信憑性は高いな」

「ふーん?モテるんだねえ。見てりゃわかるけど」

「ちなみにうちにいる上白沢と姉妹関係にあるらしい」

「ふーん……。え?なんでそんなこと知ってるの?」

「知ってるからだな」

「答えになってないよ……」



別クラスだから話すこともないだろうけど、そうか上白沢さんとか。だからちょっと似たりするのかな。なんというか雰囲気が。



「おい、中山」

「なんだい、赤羽君」

「アイツには近づくなよ!できれば、話すな、聞くな、立ち止まるな、見るな、触るな!俺以外の男子はあれに関わるとおかしくなるってりぃが言ってたぞ!」

「見るなって言われてももう手遅れなんだよねえ。なんなら僕、今手を振られてるみたい」



物語でしか見ないような上品な所作と、柔らかで見るものを魅了する……かもしれない笑みに小さく手を振る感じ。

もしかしたら隣の赤羽君や津田君にしているのかもしれない。でも、目があってる気がする。

うーん。気怠げ無表情女子な上白沢さんとは当然だけど全然違うね。まあこちらからアクションをかけなければ無害そうだし放置で良いよね。


集団は僕らのクラスに近づくと解散し、それぞれの班やクラスに戻っていく。新谷さんや上白沢さん達も僕たちの班へと食材を持ってきてくれた。



「お待たせ、みんな。そっちの準備はできた?」

「ああ。赤羽が頑張ってくれたおかげで時間に余裕を持ってな」



川瀬さんが問いかけ、津田君が返答する。

そんな様子を林道君は羨ましそうに見ているので、隣に行って肘で促す。話しかけないと何も進まないよ?と目で訴えかけると、小さく首肯する林道君。でも今じゃないと判断して動かないようだ。



「良くやった、りく。偉い」

「う、うおおお!!りぃに褒められたああ!!」



気怠そうな目と動かない表情、平坦な声で褒められて嬉しいものかと思えば、誰が褒めたかが重要な赤羽君には関係なかったらしい。天を仰ぐようにして両手をグウッと突き上げて喜びを表現しているのを見ると、本当に嬉しいらしい。



「うるさい、りく」

「うっ……ごめん」

「わかればいい。なかやん、りくの事、手伝った?」

「おう、中山は良い奴だぞ!肉もくれるらしい!」

「なかやんも偉い。後で褒める」

「おい中山、調子に乗んなよ!俺以外がりぃに褒められるなんて一生に一度あるかないかの幸運だからな!?」



赤羽君は上白沢さんが絡まなければ良いクラスメイトなんだけどな……?

新谷さんと渡貫さんが苦笑いしているのが分かる。多分僕も同じだ。

みんなと話しているとパンッと手を打ち鳴らす音が大きく響いて、そちらに目を向ける。音を鳴らしたのは担任の八宮先生だったみたいだ。



「なんだか騒がしいな。みんな、テンションが上がるのは分かるが…羽目を外しすぎて怪我とかするんじゃないぞー。だが」



八宮先生も少しばかり興奮している気がするというツッコミは入らない。ツッコミ気質な人がいないクラスも大変だなとか他人事みたいなことを考える。



「今回は特別な、クラス交流会だ。勿論、他のクラスも近いから話しかけにいくのも良いが……せっかくならクラスで気の合いそうな子と話したりしてほしい。肉に集中してもいいぞ、話しかけるのが苦手な人もいる。無理矢理に交流しようと思わずに……なんてこんな話をしているだけ説得力がないな。ただ、初めての人に話すのは難易度が高いが……どんな生徒も内心では仲良くなりたいと思っているはずだから、ぜひとも仲良くなってやってくれ」



……ふーん?仲良く、ね。



「ああ、1つだけ言い忘れていたんだが……。上級生から聞いていたり入学のしおりで見た生徒もいるかもしれないが、この学校は1年生の冬に、このクラス全員で修学旅行に行くからな。忘れるなよ?じゃあ、そろそろ待ちかねた奴もいるだろうから肉や野菜を焼いていこうか。楽しめよ、お前たち」



え、1年で修学旅行!?

とざわざわしているクラスを尻目に、八宮先生は先生達の集まる中央へと戻っていく。

修学旅行を1年生でするなんて聞いたことないけどな……



「な、中山君。今のきいた?」

「新谷さんと渡貫さん?ああ、うん。びっくりしたねえ」

「だから交流会なんて作ったのかしらね。2年生と3年生になると楽しみがなくなりそう」



新谷さんはワタワタして、渡貫さんは先の事を思い少し寂しそうにしている。行事の先取りはつまり、後は勉強に集中しろって事だからね。



「新谷さんや渡貫さん、他のみんなと一緒に行くのは楽しみだよ。せっかく話せてるんだからね」

「今ひとつ響かないセリフどうもありがとう、中山君。でもそうね、この集まっている班員と行くのは楽しみよ」

「私も、春美や中山君達と一緒に行くの楽しみ!」



前髪で少し隠れてしまっているけど屈託ない笑顔で言ってくれる新谷さんと、少し声の弾んでいる渡貫さん。みんな仲良しなんだね。わざわざ名前出して僕に気は使わなくていいよ?



「中山、そろそろ焼くから手伝ってくれ」

「あ、分かったよ、津田君」



津田君に言われたので二人に話し、その場を離れる。

津田君は近づいてきた僕に耳打ちで、



「後で多々良と秀にかわるからその時に離れれば良いからな。俺が隣で壁になっておくよ」



と言われたので小さく頷いておいた。




課外活動はまだ続きます。

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