■第98話:降霊術・コックリさん! ……えっ、呪う前に「硬貨の衛生管理」と「観念運動」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……フンッ、フンッ。うむ、高機能エルボーサポーターのおかげで、肘の曲げ伸ばしが非常にスムーズだ」
神ドラマスは、両肘にサポーターをガッチリと巻き、テニス肘予防のストレッチをこなしながらモニターを見下ろしていた。
画面の中では、ヒナタたちが花子さんのいる「王立学園」の放課後の教室を見回っていた。
「ほう! 学校の怪談編の続きだな。次なるターゲットは、子供たち自らが呼び出してしまう最恐の降霊術、コックリさん(狐狗狸さん)か!」
ドラマスはストレッチを止めてニヤリと笑った。
「紙と硬貨だけで呼び出せる、狐と狗と狸の混成霊! 物理的な実体がない『憑依』と『呪い』の現象に対し、硬貨から指を離せば発狂するという絶対的なルール! この心理的な縛りプレイの前に、ヒナタの物理ド正論もついに沈黙するはずだ!!」
【場所:人間界・王立学園 放課後の教室】
夕暮れの教室で、3人の生徒たちが机を囲み、文字が書かれた紙の上に置かれた「銅貨」に人差し指を乗せていた。
『コックリさん、コックリさん、おいでください……』
スゥゥゥ……。
生徒たちの指を乗せた銅貨が、誰も力を入れていないのに「鳥居」のマークからゆっくりと動き始めた。
「ひぃぃぃッ!! ゆ、勇者殿! 銅貨が勝手に動いておりますぞォォッ!!」
セバスチャンが教室の入り口から覗き込み、震え上がる。
「あれこそ悪霊を呼び出す降霊術! 途中で指を離せば、一生解けない呪いをかけられてしまいます!!」
銅貨は、「の・ろ・う」の文字へ向かって不気味に滑っていく。
さらに、教室の黒板の前には、呼び出された「狐と犬と狸が混ざったような、ドス黒いオーラを放つ霊」がヌルリと姿を現し、生徒たちを嘲笑っていた。
『ヒヒヒ……。もう後戻りはできないぞ……。指を離せば、その瞬間に呪い殺して……』
霊が宣告しようとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、放課後の静寂を完全に打ち砕く「衛生管理者&人間工学アドバイザー(ガチギレ・トーン)」が教室に響き渡った。
『……エッ?』
コックリさんは、黒板の前でドス黒いオーラを出したまま固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、生徒たちの指が乗っている「銅貨」をビシッと指差した。
「あなたたち!! 不特定多数の人が触って、手垢や皮脂でドロドロに汚れた『流通硬貨』を、消毒もせずに素手で触り合うなんて正気の沙汰ですか!! 銅には抗菌作用があるとはいえ、物理的な汚れには雑菌が繁殖しています! 『接触感染』でウイルスを回し飲みしているようなものですよ!!」
『せ、接触感染……!? いや、これは神聖な降霊の儀式で……』
「大体、その指が勝手に動く現象!!」
ヒナタは今度、コックリさんの霊体を指差した。
「それは霊の呪いじゃなくて、極度の緊張と恐怖で筋肉が微細に震える『観念運動』です!! 人間の無意識の筋肉の動き(生理現象)を自分の霊力だと言い張るなんて、オレオレ詐欺と同じくらい悪質ですよ!!」
『か、観念運動……!? 生理現象……!?』
コックリさんは、自分の超常現象が「ただのプラシーボ効果と筋肉の反射」として論破され、狐耳をペタンと寝かせた。
「それに、指を離すなってどういうことですか!!」
ヒナタは、ずっと指を伸ばして緊張している生徒たちの腕をさすった。
「こんな中腰の不自然な姿勢で、小さな硬貨の一点に神経を集中させていたら、首から肩にかけての僧帽筋がカチカチに固まって『重度の緊張型頭痛』を引き起こします! さらに指先の腱鞘炎まで併発する! 人間工学を完全に無視した最悪のオフィスマナーです!! 今すぐ指を離しなさい!!」
「ゴズさん、その不衛生な硬貨を回収して重曹とクエン酸で煮沸消毒して! ヴァレリアさん、生徒たちの肩を揉んであげて!!」
「ブモォッ!(おう! 汚ぇ金はピカピカに洗ってやるぜ!)」
『ナ、何ヲ……!? 私ノ呪イガ……!』
「【究極の人間工学・デスクワーク環境&進路相談プログラム】です!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「除菌アルコールジェル」「人間工学に基づいた高級オフィスチェアとエルゴノミクス・キーボード」、そして「国家資格・公認心理師のテキスト」を取り出した。
「いいですか、未来のことや悩みを、衛生環境最悪の硬貨に聞くのはやめなさい! 相談するなら、正しい姿勢で、専門家に聞きなさい!」
ヒナタは、コックリさん(霊体)を強引に「高級オフィスチェア」に座らせ、目の前にエルゴノミクス・キーボードを設置した。
『アァッ……! な、なんだこの椅子のランバーサポート(腰当て)は……! 宙に浮いていた霊体の腰に、信じられないほどのフィット感……! そしてこのキーボード、手首を全く捻らなくても自然にタイピングできる……!』
「はい、あなたは文字を打つのが得意みたいですから、今日から『タイピングによるオンライン進路相談室』を開設してください! 呪いじゃなくて、心理学に基づいた正しいカウンセリングを行うこと!!」
『わ、わかったコン……!』
コックリさんは、あまりのキーボードの打ちやすさと、オフィスチェアの快適さにすっかり憑き物が落ち、ものすごいブラインドタッチで生徒たちの悩み(恋愛や進路)に、的確で優しいアドバイスを打ち込み始めた。
数日後。
そこには、十円玉で子供たちを恐怖に陥れる不気味な悪霊の姿はなかった。
首から社員証(公認心理師)を下げ、エルゴノミクス・キーボードをカタカタと軽快に叩きながら、生徒たちの心のケアを全力でサポートする「学園専属の超優秀なスクールカウンセラー(狐犬狸のキメラ)」が、正しい姿勢でデスクに向かっていた。
「……ゆ、勇者殿。最恐の降霊術が……『観念運動を指摘され、人間工学キーボードを愛用するホワイトな心理カウンセラー』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、コックリさんに「老後の資産運用」についてタイピングで相談し、非常に的確な回答をもらって深く頷いていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、無言で自分の手元の安物キーボードを見つめた。
『コックリさんが……「硬貨の接触感染」と「観念運動」で完全論破された……』
『指を離すなというルールは「人間工学を無視した緊張型頭痛の原因」として怒られ、高級オフィスチェアとエルゴノミクス・キーボードを与えられた……』
ドラマスは、もはや「降霊術」すら「劣悪なデスクワーク環境」として処理されてしまうヒナタの圧倒的ロジックに完全降伏し、通販サイトで「エルゴノミクス・分割型キーボード」と「前傾姿勢対応・高級オフィスチェア」をポチり、自らの肩こりと腱鞘炎の撲滅に向けて、正しいブラインドタッチの練習を開始するのだった。
(第98話・完)
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