■第99話:死体を奪う地獄の使者・火車! ……えっ、地獄へ運ぶ前に「消防法違反」と「感染症対策」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……カタカタカタッ、ターン!! うむ、エルゴノミクス・キーボードは素晴らしい。手首の負担が全くないまま、凄まじい速度でタイピングができるぞ」
神ドラマスは、正しい姿勢で高級オフィスチェアに深く腰掛け、ご機嫌な様子で天界の事務作業をこなしていた。
ふとモニターを見下ろすと、ヒナタたちは王都の郊外にある墓地で、とある豪商(生前は結構な悪人だったらしい)の葬儀に参列しているところだった。
「ほう! 次なる怪異は葬儀の場に現れる地獄の使者、火車か!」
ドラマスは、キーボードから手を離してニヤリと笑った。
「悪人の亡骸を狙って、燃え盛る炎の車と共に空から飛来する恐ろしい猫の妖怪! 圧倒的な業火と、死者を地獄へ引きずり込む絶対的な物理(霊的)強制力! 神聖な葬儀の場をパニックに陥れるこの地獄の炎の前に、ヒナタのオカン的説教もついに燃え尽きるはずだ!!」
【場所:人間界・王都郊外の墓地】
しめやかに豪商の葬儀が営まれている最中、突如として空がどす黒い雲に覆われ、強烈な突風が吹き荒れた。
ゴォォォォォォッ!!!
「な、なんだ!? 空から火の玉が降ってくるぞ!!」
参列者たちが悲鳴を上げる。
火の玉の正体は、全身から業火を吹き出し、燃え盛る「炎の車」に乗った巨大な猫の妖怪――火車だった。
『ニャァァァァッ!! この棺桶の中の男は、生前悪事ばかり働いた大罪人! その亡骸、地獄の釜茹でにするために俺様がもらい受けるニャ!!』
火車が、猛烈な熱波を撒き散らしながら棺桶に飛び乗り、炎に包まれた鋭い爪でご遺体を乱暴に引きずり出そうとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、地獄の業火すら完全に鎮火させる「消防庁&保健所」が墓地に響き渡った。
『……ニャ?』
火車は、棺桶の上で炎をまといながら固まった。
ヒナタは、喪服のまま四次元リュックをドンッと置き、火車の乗ってきた「燃え盛る車」をビシッと指差した。
「あなた!! こんな木造の寺院や枯れ草の多い墓地の近くで、そんな火の粉を撒き散らす車に乗ってくるなんて『消防法(火災予防条例)違反』です!! 乾燥注意報が出ているのに、延焼して山火事になったらどう責任を取るんですか!! そもそもその車の排気ガス、二酸化炭素(CO2)の排出量が多すぎて完全な環境破壊です!!」
『しょ、消防法……!? いや、俺様は地獄の炎をまとった使者で……』
「大体、その素手!!」
ヒナタは今度、ご遺体に触れようとしている火車の鋭い爪を指差した。
「亡くなった方のお体を素手で、しかもそんな煤だらけの不衛生な手で運ぼうとするなんて!! ご遺体からは腐敗による細菌や、予期せぬ『病原体(感染症リスク)』が発生する可能性があるんですよ!! 葬儀の場での公衆衛生とエンバーミング(死体衛生保全)の基本すらできていない!! 完全なガイドライン違反です!!」
『こ、公衆衛生……!? エンバーミング……!?』
火車は、地獄の使者としての威厳を「感染症リスク」という超現実的なワードで粉砕され、思わず自分の爪を見つめてしまった。
「今日から、徹底的な『防火管理』と『感染症対策』を叩き込みます!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「業務用・蓄圧式ABC粉末消火器」「N95規格の医療用防護マスクとニトリルグローブ(手袋)」、そして「完全密閉型のご遺体搬送用・抗菌ボディバッグ」を取り出した。
「ゴズさん、消火器でその危険な炎の車を消火して! ヴァレリアさん、防護服を着て棺桶の周りを消毒して!!」
「ブモォッ!(おう! 火の始末は基本中の基本だぜ! プシューーーッ!!)」
ゴズが消火器をぶっ放し、火車の「地獄の炎」は真っ白な粉末と共に一瞬で鎮火された。
『ニャ、ニャンてことを!! 俺様の地獄の業火が、ただの粉まみれに……!!』
「【究極の安全第一・感染症対策ご遺体搬送プログラム】です!!」
ヒナタは、炎が消えてただの大きな猫になった火車に、N95マスクをガッチリと装着させ、両前足に「青いニトリルグローブ」を履かせた。
『息が……このマスク、息が苦しいニャ!! しかもこのゴム手袋、ピタッとしてて爪が出せないニャ!』
「それが『防護』というものです! 自分の身を守り、周囲への感染拡大を防ぐための絶対的なルールです!」
ヒナタは、ご遺体を丁重に「抗菌ボディバッグ」に収めると、火車の車(鎮火済み)に乗せた。
「これからは、ご遺体を運ぶ時は必ず『マスクと手袋』を着用すること! そして、移動には火を使わず、環境に優しい『電気自動車(EV)の霊柩車』を使いなさい! 地獄への搬送もエコの時代ですよ!!」
『エ、エコの時代……!? わ、わかったニャ……。地獄の閻魔様にも、これからは排ガス規制があるって言っておくニャ……』
数日後。
そこには、葬儀を荒らす恐ろしい火の妖怪の姿はなかった。
ビシッとした黒のスーツ(運転手用)に身を包み、N95マスクと真っ白な手袋を着用し、音もなく静かに走る「最新型EV霊柩車の超優秀な専属ドライバー」が、遺族に深く一礼してから、安全運転で王都の火葬場へと向かっていく姿があった。
「……ゆ、勇者殿。地獄の使者が……『消防法と公衆衛生を遵守し、ゼロエミッションで走る最高の霊柩車ドライバー』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、排気ガスを一切出さずに走り去る霊柩車を見送りながら、王国の環境対策がまた一歩前進したことに感動していた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、エルゴノミクス・キーボードを叩く手を止めた。
『火車が……「消防法違反」と「感染症対策の欠如」を指摘され、消火器で地獄の炎を消された……』
『挙句の果てに、N95マスクと手袋を装着させられ、エコなEV霊柩車のドライバーになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「地獄の業火」すら「火災予防条例違反」として消火器で物理的に消し止めてしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「家庭用・ABC粉末消火器」と「火災報知器(一酸化炭素検知機能付き)」をポチり、自らの神殿の防災意識を極限まで高めることを決意するのだった。
(第99話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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