■第97話:超高速の都市伝説・テケテケ! ……えっ、切り裂く前に「重度のテニス肘」と「軟骨のすり減り」の説教ですか?
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それでは、本編をお楽しみください!
【場所:天界・管理室】
「……ウィィィィン。うむ、電動歯ブラシの音波振動は素晴らしい。歯垢が根こそぎ落ちていくのがわかるぞ」
神ドラマスは、犬神のエピソードから学んだ完璧なオーラルケアを実践し、ツルツルの歯を見せてモニターに向かっていた。
画面の中では、ヒナタたちが夕暮れの王都の外れ、「古びた鉄道の踏切」の近くを歩いていた。
「ほう! 次のターゲットは、近代の都市伝説でも群を抜くスピードと殺傷能力を誇る怪異、テケテケか!」
ドラマスは、電動歯ブラシのスイッチを切って身を乗り出した。
「下半身を失い、両腕の力だけで時速100キロメートル以上の猛スピードで這い寄り、手にした大鎌で獲物を真っ二つにする理不尽の極み! この物理的な『圧倒的スピード』と『凶器』の前に、ヒナタのオカン的説教もついに追いつくまい!!」
【場所:人間界・夕暮れの踏切付近】
カンカンカンカン……!
踏切の警報機が鳴り響く中、線路の向こう側から、異様なスピードで地面を這い寄ってくる「何か」があった。
テケテケテケテケテケテケッ!!!
それは、セーラー服を着た、下半身のない少女だった。
両手と両肘だけを使い、アスファルトを激しく叩きつけながら、恐ろしい速度でヒナタたちに迫ってくる。その手には、ギラリと光る巨大な「草刈り鎌」が握られていた。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 噂のテケテケですぞォォッ!!」
セバスチャンが絶叫してゴズの背中に飛び乗る。
「あのスピードから繰り出される鎌の一撃! 我々も下半身を真っ二つにされてしまいます!!」
『フフフ……。お前たちも、私と同じ姿にしてあげる……!』
テケテケが、狂気の笑みを浮かべながら大鎌を振りかざし、最後の跳躍を見せようとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、踏切の音すら完全に制圧する「整形外科医&スポーツトレーナー(ガチギレ・トーン)」が夕暮れの空に響き渡った。
『……エッ?』
テケテケは、大鎌を振り上げたまま、急ブレーキをかけてアスファルトの上でピタリと止まった(ズザザーッ!)。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、テケテケの両肘と手首をビシッと指差した。
「あなた!! その『テケテケ』って音!! それは妖怪が近づく足音じゃなくて、クッション性のない硬いアスファルトに肘を打ち付け続けたせいで、肘の軟骨が完全にすり減って骨同士が削れ合っている『関節の摩擦音』じゃないですか!!」
『か、関節の摩擦音……!?』
「下半身がないからって、全体重を腕だけで支えて時速100キロで走るなんて!!」
ヒナタは、テケテケの手首をガシッと掴んだ。
「これじゃあ完全に『手根管症候群』と『上腕骨外側上顆炎(通称:テニス肘)』の末期症状です!! しかも素手!? 衝撃を吸収するサポーターもグローブもつけずに全力疾走するなんて、スポーツ障害を何だと思ってるんですか!! 関節が完全に壊れて一生腕が動かなくなりますよ!!」
『テ、テニス肘……!?』
テケテケは、言われてみれば最近、腕を動かすたびに肘や手首に「ピキッ」と激痛が走っていたことを思い出し、鎌を持つ手をプルプルと震わせた。
「大体、その鎌!!」
ヒナタは、テケテケの持っている凶器を指差した。
「刃物を鞘にも収めずに、そんな猛スピードで持ち歩くなんて『刃物類持ち歩きの安全管理違反』です!! もし走行中に転んだら、自分の胸や顔に刺さって大惨事になりますよ!! 危険作業の基本すらできていない!!」
「ゴズさん、その危ない鎌を没収して! ヴァレリアさん、アイシング(冷却魔法)の準備を!!」
「ブモォッ!(おう! 刃物を持ったままの全力疾走は危ねぇからな!!)」
『ナ、何ヲ……!? 私ノ恐怖ノ疾走ガ……!』
「【究極の関節保護&バリアフリー・モビリティ提供プログラム】です!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「プロアスリート用・超衝撃吸収ショックアブソーバー内蔵グローブ」「医療用エルボーサポーター(両肘用)」「高濃度コンドロイチン&ヒアルロン酸配合の関節ゼリー」、そして「最高級ベアリングとダウンヒル用特大ウィールを備えた、超高性能ロングスケートボード」を取り出した。
ヒナタは、酷使されて真っ赤に腫れ上がっていたテケテケの両腕に、優しくアイシングを施し、医療用サポーターとプロ仕様のグローブをガッチリと装着させた。
『アァッ……! ジンジン痛かった肘が……サポーターの圧着とアイシングで、スゥーッと楽になっていく……! グローブのクッション性が凄すぎて、地面に手をついても全く痛くない……!』
「はい、軟骨の再生のためにこのゼリーを飲んで! そして、これからは自力で走らないで、この『スケートボード』に乗りなさい!」
ヒナタが、テケテケの体をひょいと持ち上げ(下半身がないので軽い)、特注のロングスケートボードの上に乗せた。
「グローブで地面を軽く蹴ってプッシュするだけで、この最高級ベアリングが異次元の加速を生み出します! 関節への負担はほぼゼロです!!」
『な、なんだと……!?』
テケテケが、半信半疑でサポーター付きの腕で地面を「スッ」と軽く蹴った瞬間。
ギュィィィィィンッ!!!
『は、速いィィィィッ!!!』
テケテケは、今までの「テケテケ」という摩擦音(悲鳴)を全く立てることなく、無音のまま時速200キロメートルの猛スピードで、夕暮れの道路を滑らかにカッ飛んでいった。
『す、すげぇ!! 肘が全く痛くないのに、今までの倍以上のスピードが出る!! 風が……風が気持ちいい!! これが、バリアフリーと最新のモビリティの力……!!』
数日後。
そこには、夜の踏切で人を待ち伏せて切り裂く恐ろしい都市伝説の姿はなかった。
キャップを後ろ被りし、プロ仕様のグローブとサポーターを身につけ、特注のスケートボードで華麗なトリックを決めまくる「車いす(スケボー)エクストリームスポーツのカリスマ・プロアスリート」が、王都の若者たちの憧れの的として、ハーフパイプを舞っていた。
「……ゆ、勇者殿。最速最恐の都市伝説が……『テニス肘を克服し、スケボーのダウンヒルで世界を目指すプロアスリート』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、テケテケの華麗なエア・トリック(空中回転)を見上げながら、思わず拍手喝采を送っていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、電動歯ブラシを静かに置いた。
『テケテケが……「テケテケ音は軟骨のすり減る音」と「テニス肘」を指摘され、アイシングされた……』
『鎌は安全管理違反として没収され、ロングスケートボードを与えられてプロスケーターになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「異形の這い寄る恐怖」すら「劣悪な関節への負担とモビリティの欠如」として論破し、スポーツ科学の力で解決してしまったヒナタに完全降伏し、通販サイトで「関節痛予防のコンドロイチンサプリ」と「高機能エルボーサポーター」をポチり、自らの肘と膝の健康を何よりも最優先に守ることを固く誓うのだった。
(第97話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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