■第9話:港に「クラーケン」出現! ……わあ、焼きイカの特大サービスですか?
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【場所:港町「ポルト」・大食い大会特設ステージ】
「さあ! 第10回・大食い王決定戦! 優勝候補筆頭は、突如現れた謎の牛人間、ゴズ選手だーッ!!」
ワーッ!!
観客の歓声が響く。
ステージ中央では、ミノタウロスのゴズが、山積みのホットドッグをブラックホールのように吸い込んでいた。
「ブモォォォッ!(うめぇぇぇ!)」
「強い! 早い! 昨年のチャンピオンがドン引きしているーッ!」
その横で、ヒナタは応援席でペンライト(魔法道具)を振っていた。
「頑張れゴズさーん! 優勝賞品の『高級お肉セット』は目の前ですよ~!」
ヴァレリアとエイル、セバスチャンも、屋台の焼きそばを食べながら観戦している。
「ふむ、ゴズの顎の力なら余裕だな」
「筋肉の使い方が違いますね」
「(もうどうにでもなれ……焼きそば美味い……)」
平和だ。あまりにも平和すぎる。
【場所:天界・管理室】
『平和ボケしやがってぇぇぇッ!!』
神ドラマスが、モニターに向かってポップコーン(ストレス食い)を投げつけた。
『ここは「魔物が跋扈する危険な世界」なんだぞ!? なんで「大食い大会」なんてやってるんだ!』
『もういい! 強制イベントだ! 海の底で眠る「あいつ」を叩き起こしてやる!』
ドラマスはコンソールを操作し、【エリアボス:大王イカ(クラーケン)】の封印を解除した。
本来なら、船旅の途中で嵐と共に現れ、船を破壊する絶望的なボスモンスターだ。
『行けクラーケン! 港を襲撃しろ!』
『楽しいお祭りを阿鼻叫喚の地獄に変えて、奴らに「戦いの厳しさ」を思い出させるのだァァァッ!!』
【場所:港町「ポルト」・港】
ズゴゴゴゴゴ……ッ!!
突如、穏やかだった海面が盛り上がり、巨大な水柱が上がった。
空が急激に曇り、雷鳴が轟く。
「な、なんだ!?」
「海から……化け物だァァァッ!!」
海中から現れたのは、軍船をも絡め取るほどの巨大な触手を持つ、伝説の魔獣クラーケンだった。
その大きさは、港の灯台よりも巨大だ。
『グオオオオオオオオッ!!』
クラーケンの咆哮が、祭りの会場を震わせる。
人々はパニックになり、逃げ惑う。
「ひぃぃぃッ! クラーケンだ! 街が沈められるぞ!」
「逃げろーッ! 祭りは中止だーッ!」
領主グラン侯爵も顔面蒼白だ。
「ば、馬鹿な……! なぜこんな浅瀬に伝説の魔獣が!? 勇者殿! 勇者殿はいずこかーッ!?」
会場は混乱の渦に包まれた。
――ただ一箇所、「勇者席」を除いて。
「……おや?」
ヒナタは、逃げるどころか、ステージの最前列まで駆け寄っていた。
その目は、かつてないほどキラキラと輝いている。
「すごい……! すごいですよ皆さん!」
ヒナタが叫んだ。
「このお祭り、こんな『ビッグ・サプライズ』まで用意してたんですね!!」
「……は?」
隣にいたセバスチャンが固まる。
「見てください、あの巨大なイカ! 新鮮で、プリプリしてて……」
ヒナタはゴクリと喉を鳴らした。
「あれ、『参加者全員への振る舞いイカ』ですよね!?」
「ち、違います勇者殿! あれは魔物……」
「だって、あんなに大きいんですよ? この会場の人全員が食べても余りますよ!」
ヒナタの脳内では、クラーケンはすでに「食材」として認識されていた。
「領主さん、太っ腹だなぁ! 最高の演出ですね!」
ヒナタは振り返り、満面の笑みで仲間にオーダーを出した。
「ゴズさん! メインディッシュのお時間ですよ!」
「ヴァレリアさん、エイルさん! 『調理』をお願いします!」
その言葉を聞いた瞬間。
「平和ボケ」していた最強メンバーたちの目に、鋭い光(食欲)が宿った。
「……ふっ。そうか、あれは食材か」
ヴァレリアが立ち上がり、剣を抜く。
「確かに、あのサイズなら刺し身が何千人前取れるかな……」
「火を通した方が安全でしょう」
エイルが眼鏡をクイッと上げる。
「私の『焦熱魔法』で、一瞬で姿焼きにしてあげましょう」
「ブモォォォッ!!(肉ぅぅぅぅッ!!)」
優勝を逃した(腹八分目の)ゴズが、斧を持って突進する。
『なっ……!? 貴様ら、正気か!?』
天界でドラマスが絶叫する。
『あれはレベル50のエリアボスだぞ!? 陸から挑んで勝てる相手じゃ……』
しかし。
彼らにとって、今のクラーケンは「敵」ではない。
ヒナタが「食べたい」と言った、ただの「巨大な晩ごはん」だ。
「行くぞ! ヒナタ殿がお腹を空かせている!」
「了解! 最大火力で焼き上げます!」
ドォォォォォォォン!!!!
ヴァレリアの斬撃が触手を切り落とし、エイルの爆炎魔法が本体を包み込み、ゴズの斧が眉間を粉砕した。
『ギャアアアアアアッ!?』
クラーケンの断末魔は、一瞬にして「香ばしい醤油の匂い」へと変わった。
【場所:お祭り会場・その後】
数分後。
そこには、きれいに解体され、こんがりと焼かれた「山盛りの焼きイカ」が完成していた。
「わあ~! 柔らかくて美味しい!」
ヒナタが巨大なイカの切り身を頬張る。
「皆さん! 領主さんからのプレゼントですよ! 並んで並んで!」
呆然としていた街の人々も、あまりにいい匂いに釣られて戻ってきた。
「こ、これ……さっきの化け物か?」
「うめぇ! めちゃくちゃ美味いぞ!」
「勇者様がやってくれたんだ! ありがとう勇者様ー!」
パニックは一転、前代未聞の「巨大イカ焼きパーティー」へと変貌した。
領主グラン侯爵も、イカを齧りながら涙目で呟いた。
「伝説のクラーケンを……『食材』として瞬殺するとは……」
「やはり……やはりこの勇者、桁が違う……!」
セバスチャンも、胃薬を飲むのを諦めてイカを受け取った。
「……もういい。国に帰ったら、陛下にもお土産に持って帰ろう」
【場所:天界・管理室】
『嘘だろォォォォッ!!』
神ドラマスは、頭を抱えて机に突っ伏していた。
『私の……私のエリアボスが……』
『船旅の恐怖の象徴が……ただの「お祭りのメインディッシュ」になって終わった……』
モニターの中では、ヒナタが満面の笑みで空(神様)に向かって手を振っていた。
「神様~! 見てますか~! この世界、ご飯が美味しくて最高ですね~!」
『…………』
ドラマスは悟った。
こいつに「恐怖」を与えることは不可能だ。
どんな強敵を送っても、「珍しいペット」か「美味しい食材」に変換されてしまう。
『……もう、好きにしろ』
神様が、初めて「育児放棄」を決意した瞬間だった。
しかし、神が諦めても、ヒナタの「勘違い旅」はまだまだ終わらない。
次は、いよいよ船旅。
ボス不在の海を、豪華客船気分で征くクルーズ編が始まる。
(第9話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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