■第10話:神々の「鑑賞会」と、勇者一行の「豪華クルーズ」
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【場所:地球の神界・管理室(VIPルーム)】
『アハハハハハ! 最高! いやー、今期一番のコメディだね!』
地球の神様は、高級そうなリクライニングチェアに寝そべり、ポップコーンを頬張りながら爆笑していた。
目の前の巨大モニターには、二つの映像が同時に映し出されている。
一つは、港町ポルトで盛大に見送られるヒナタたちの様子。
そしてもう一つは、別ウィンドウで繋がっている、異世界の神ドラマスの顔面ドアップだ。
『……笑うな。私の世界が「グルメ番組」にされているんだぞ……』
画面の中のドラマスは、頬がげっそりとこけ、目の下には深いクマができていた。手には業務用サイズの胃薬の瓶が握られている。
地球神は、意地悪くニヤニヤと笑った。
『いやー、傑作だったよ昨日の「クラーケン解体ショー」。君が丹精込めて配置した中ボスが、まさか「振る舞いイカ」になるとはねぇ』
『おかげで視聴率(私のテンション)も爆上がりだよ。ナイス演出、ドラマス監督!』
『演出じゃなーい!! 事故だ! 放送事故だ!』
ドラマスが叫ぶと、胃薬の瓶がカラカラと音を立てた。
『まあまあ、落ち着きなって。ほら見てごらん、君の勇者がいよいよ出港するよ?』
『次のステージは「海」だ。感動の海洋アドベンチャーが始まるんじゃない?(鼻ホジ)』
『……始まるわけがない』
ドラマスは虚無の目で呟いた。
『海の脅威はもういない。奴らにとって、この海はただの「安全な温水プール」だ……』
地球神は、絶望する同業者の姿を肴に、さらにワインを美味しくいただいた。
『カッカッカ! その「諦めの境地」、嫌いじゃないよ。さあ、次の「癒やし動画」を見せてもらおうか!』
【場所:港町ポルト・中央桟橋】
その日、港には街中の人々が集まっていた。
「勇者様ー! ありがとうー!」
「また美味しいもの食べに来てねー!」
「ゴズちゃーん! 元気でねー!」
紙吹雪が舞い、ブラスバンドが演奏する中、ヒナタ一行は桟橋を歩いていた。
彼らが乗り込むのは、グラン侯爵が(クラーケン退治の感謝として)手配した、国一番の超豪華客船「クイーン・セバスチャン号」だ。
「わあ……! すごい! こんな大きな船、初めてです!」
ヒナタが目を輝かせて、タラップを駆け上がる。
その背中には、街の人々から貰った大量のお土産(乾物、瓶詰め、民芸品)が詰まったリュックが、山のように膨れ上がっていた。
「ふむ。これなら揺れも少なそうだな」
ヴァレリアも、大量の燻製イカを抱えて乗り込む。
「船旅か。久々の休息だな(ずっと休んでいたが)」
エイルは、最新の魔導コンロを船員に運ばせていた。
そして、見送りの列の最前列には、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたセバスチャンと、グラン侯爵がいた。
「ううっ……勇者殿……。どうかご無事で……!」
セバスチャンがハンカチを噛む。
(やっと……やっとあの「魔の引力」から解放される……! これで王都に帰れる……!)
「皆様のことは忘れません! この街の救世主よ、永遠なれ!」
グラン侯爵が叫ぶ。
ヒナタは甲板に立ち、満面の笑みで大きく手を振り返した。
「皆さーん! いってきまーす!」
「お魚いっぱい釣ってきまーす!」
「ブモォォォ!(達者でなー!)」
ボォォォォォォン……!
重厚な汽笛が鳴り響き、豪華客船がゆっくりと岸を離れていく。
それは、世界の命運をかけた航海の始まり――ではなく、どう見ても「長期バカンス」の始まりだった。
【場所:航海中の甲板(出港から1時間後)】
陸地が小さくなっても、船の上に緊張感は微塵もなかった。
ザザァン……と穏やかな波音が響く。
抜けるような青空。照りつける太陽。
「ん~っ! 海風が気持ちいいですねぇ!」
ヒナタは、甲板の一等地に設置したデッキチェアに寝そべり、トロピカルジュース(お手製)を飲んでいた。
頭には麦わら帽子、目にはサングラス。完全にリゾートスタイルだ。
「そうだな。この揺れが心地よい眠りを誘う……」
隣のチェアでは、ヴァレリアが早速高いびきをかき始めている。
「私は船酔い防止の魔法をかけたので完璧です。さて、読書でも……」
エイルは優雅にパラソルの下で魔導書(という名の娯楽小説)を開いた。
ゴズは船尾で、船員たちと楽しそうに釣りを始めている。
「ブモッ! ブモモ!(大物狙うぜ!)」
船長がヒナタに挨拶に来た。
「勇者様、快適な船旅でしょうか? この海域の主は先日討伐されたそうですので、当面は安全な航海となります」
「はい、最高です船長さん!」
ヒナタはサングラスをずらしてニコッと笑った。
「あ、そうだ。今日のディナーなんですけど、さっきゴズさんが釣った魚で『海鮮BBQ』にしませんか?」
「ははは! それは名案ですな! 甲板を貸し切りにしましょう!」
船員たちも、乗客たちも、みんな笑顔だ。
魔王の脅威? 世界の危機?
そんなものは、この水平線の彼方に置き忘れてきたようだ。
ヒナタはジュースを飲み干し、満足げに空を見上げた。
「いやぁ、異世界って本当にいいところですねぇ」
「神様、こんな素敵な『クルーズ旅行』まで用意してくれるなんて……感謝しなきゃなぁ」
『…………』
遠い天界で、胃薬を噛み砕く音が聞こえた気がした。
こうして、ボス不在の安全な海を征く、優雅な船旅が始まったのだった。
(第10話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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