■第11話:船上釣り大会開催! ……えっ、その「海竜」もエントリー魚ですか?
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
本編をお楽しみください
【場所:クイーン・セバスチャン号・特設フィッシングデッキ】
「さあ皆さん! 本日のお昼ご飯をかけた『第1回・船上釣り大会』を開催しまーす!」
ヒナタの開会宣言と共に、甲板に歓声が上がった。
参加者は、乗客、船員、そして勇者一行。
賞品は、ヒナタ特製の「フルコース・ディナー券」だ。
「狙うは優勝のみ……!」
騎士団長ヴァレリアが、剣を釣竿に持ち替え、殺気立った目で海面を睨む。
「フッ、私の『探知魔法』があれば、魚群の位置など手に取るようにわかる」
賢者エイルは、魔導書ではなく魚群探知のスクロールを広げている。
そして、優勝候補筆頭のゴズは――。
「ブモッ! ブモモッ!(この特製ルアーで一網打尽だぜ!)」
鼻息荒く、ドラム缶のような腕で竿を振るっていた。
平和だ。
どこまでも平和な光景だ。
【場所:天界・管理室】
『平和すぎて反吐が出るわァァァッ!!』
神ドラマスは、モニターの前で頭を抱えていた。
『ここは魔の海域だぞ!? なぜ緊張感がない! なぜ「入れ食い状態」なんだ!』
画面の中では、次々と魚が釣り上げられ、その場で調理されている。
『くそっ……! こうなったら、この海域の「真のヌシ」をぶつけてやる!』
ドラマスは禁断のコンソールを操作した。
【緊急クエスト:海竜リヴァイアサンの強襲】
【難易度:SSS(国家転覆級)】
『行けリヴァイアサン! 船ごと飲み込んでしまえ!』
『釣り大会などというふざけたイベントを、絶望のサバイバルに変えてやるのだァァァッ!!』
【場所:釣り大会会場】
ズゴゴゴゴゴ……ッ!!
突如、船が激しく揺れた。
海面が大きく盛り上がり、空が暗くなる。
「な、なんだ!?」
「大波か!?」
船員たちがざわつく中、海を割って現れたのは――。
全長数百メートル、青白い鱗に覆われた、伝説の海竜リヴァイアサンだった。
『ギャオオオオオオオオッ!!』
咆哮だけでマストが軋む。
その巨大な口は、船など一飲みにしてしまいそうだ。
「ひぃぃぃッ! リ、リヴァイアサンだァァァッ!?」
「終わった……! クラーケン以上の化け物だ!」
船上はパニックになった。
セバスチャンも腰を抜かしている。
「か、神よ……! なぜこんな試練を……!」
しかし。
釣り大会の参加者(勇者一行)だけは、違った。
「……む?」
ヒナタが、手元の竿を見つめる。
「すごい引きです! 根がかりかな?」
「いや、ヒナタ殿」
ヴァレリアが冷静に海面を指差した。
「貴殿の針、あの『海竜』の口にかかっているぞ」
「えっ!?」
見ると、ヒナタの投げたルアーが、運悪く(運良く?)出現したリヴァイアサンの下顎にガッチリとフッキングしていた。
「わあ、本当だ! すごい大物ですねぇ!」
ヒナタは目を輝かせた。
「これ、釣り上げたら優勝間違いなしですよ!」
「ブモッ!?(マジかよ!?)」
ゴズが驚く。
『ギャアッ!? 痛いッ!?』
リヴァイアサンが暴れる。口に違和感があるのだ。
彼は怒り狂い、船に向かってブレスを吐こうとした。
しかし、ヒナタは楽しそうにリールを巻き始めた。
「負けませんよ~! よーし、力比べです!」
「ゴズさん! 手伝ってください!」
「ブモォォォッ!!(任せろォォォッ!!)」
ヒナタと、怪力無双のミノタウロスが、同時に竿を引く。
さらに、ヴァレリアとエイルも加勢する。
「ふんっ! 騎士団の力を見せてやる!」
「身体強化! 全員にかけるぞ!」
ギリギリギリギリ……ッ!!
信じられない光景が繰り広げられた。
伝説の海竜が、人間(と牛)の力によって、ジリジリと船の方へ引き寄せられていくのだ。
『な、何ィィィッ!?』
天界でドラマスが絶叫する。
『バカな! リヴァイアサンは数千トンあるんだぞ!? なぜ釣り上げられそうになってるんだ!?』
それは、ヒナタの固有スキル【お魚天国】の効果だった。
「釣竿を握っている間、対象が『魚介類』であれば、筋力に無限の補正がかかる」という、地球の神様が仕込んだ悪ふざけスキルだ。
「せーのっ! よいしょーッ!!」
ドッパァァァァァァン!!!!
巨大な海竜が、宙を舞った。
そして、甲板の上(結界で強化済み)に、ドサァッと水揚げされた。
『グ、グエェェェ……ッ』
リヴァイアサンは目を回してピクピクしている。
一瞬の静寂。
そして、ヒナタが満面の笑みでVサインをした。
「釣れましたーッ!!」
「皆さん! 今夜は『竜のお刺身』食べ放題ですよーッ!!」
「「「うおおおおおおおッ!!!」」」
乗客たちの恐怖の悲鳴は、歓喜の雄叫びへと変わった。
「すげぇ! 勇者様が海竜を一本釣りしたぞ!」
「さばけーッ! 醤油を持ってこーいッ!」
ヴァレリアが聖剣を包丁に持ち替え、鮮やかな手付きで解体を始める。
「ふむ、この鱗は硬いが、身は極上の霜降りだな」
エイルが氷魔法で即席の冷蔵庫を作る。
「鮮度が命ですからね。急速冷凍しますよ」
可哀想なリヴァイアサン。
登場からわずか3分で、彼は「伝説の魔獣」から「高級食材」へとジョブチェンジさせられてしまった。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、真っ白な灰になっていた。
もう、怒る気力もない。
画面の中では、ヒナタが「竜の兜焼き」を頬張りながら、幸せそうに笑っている。
『……もういい』
ドラマスは呟いた。
『海は……海は捨てよう』
『次の大陸だ。砂漠だ。灼熱の砂漠なら、さすがにピクニックはできまい……』
神様は、涙ながらに次のステージへの希望を託した。
しかし、彼がまだ知らないことがある。
砂漠こそが、ヒナタにとって「最高のサンドボックス(砂場)」になるということを。
(第11話・完)
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました!
ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
皆様からの応援が、毎日の更新の最大のエネルギーになっています!




