■第8話:食レポ勇者の爆誕。そして街の「経済」が回り始めた
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【場所:港町「ポルト」・中央市場】
「うわぁ~! 見てください皆さん! お魚がキラキラしてますよ!」
活気あふれる市場の入り口で、ヒナタの歓声が響いた。
磯の香りと、炭火で海鮮を焼く香ばしい匂い。
ここは食の天国だ。
「さあさあ、寄ってって! 新鮮なイカ焼きだよ!」
屋台の頑固そうなおやじが声をかける。
ヒナタは吸い寄せられるように近づき、焼きたてのイカ串を受け取った。
「いただきます。……はふっ、はふっ」
一口かじった瞬間、ヒナタの表情がパァァァッと輝いた。
「んん~っ!! 美味しいぃぃぃッ!!」
ただの「美味しい」ではない。魂が震えるようなリアクションだ。
「このプリプリした食感! 噛むほどに広がる海のミルク! そしてこの秘伝のタレ……醤油の香ばしさと少しの甘みが、イカの旨味を最大限に引き出してます!」
「おじさん、これを作ったあなたは天才ですか!? 海の魔法使いですか!?」
「へ……?」
頑固親父が照れて赤くなる。
「そ、そうか? まあ、タレは先代から継ぎ足してる自慢のモンだが……」
「やっぱり! 歴史の味がすると思いました!」
ヒナタは親父の手を両手で握りしめた。
「こんなに美味しいものを食べさせてくれて、ありがとうございます! 今日まで生きててよかった~!」
ズキューン。
頑固親父のハートが撃ち抜かれた。
「……に、兄ちゃん、わかってるじゃねぇか!」
親父は涙ぐみながら、焼きイカをもう3本差し出した。
「気に入ったなら、これもおまけだ! 仲間と食いな!」
「ええっ! いいんですか!? やったー!」
【場所:市場のメインストリート】
この「ヒナタ・旋風」は止まらなかった。
パン屋にて。
「すごい! このパンの小麦の香り、太陽の匂いがします! 毎朝こんなパンが焼けるなんて、最高の職人さんですね!」
→ 店主感激。「パンの耳」揚げたやつを袋いっぱいに貰う。
八百屋にて。
「なんて瑞々しいトマト! 農家さんの愛を感じます! まるで宝石みたいだなぁ」
→ おかみさん大喜び。キュウリとナスをおまけされる。
ガラス細工店にて。
「綺麗だなぁ……。職人さんの指先には神様が宿ってるんですね。見てるだけで心が洗われます」
→ 職人が号泣。試作品の小瓶をプレゼントされる。
ヒナタが通った後は、店主たちがみんな「いい仕事をした……」という満足感に包まれ、笑顔になっていく。
褒め上手な勇者は、瞬く間に街のアイドルとなっていた。
「見ろよ、あの勇者様。すげぇ腰が低いぞ」
「俺たちの仕事をあんなにリスペクトしてくれるなんて……」
「勇者様ー! こっちのコロッケも食べてってくれー!」
黄色い声援(とおじさん達の野太い声援)が飛ぶ。
その後ろを歩く、宰相セバスチャンは呆れていた。
「……なんだこれは。王都でのパレードより盛り上がっているではないか」
「ふん、当然だ」
騎士団長ヴァレリアが、両手にイカ焼きとコロッケを持ちながらドヤ顔をする。
「ヒナタ殿の言葉には『嘘』がない。だから心に響くのだ。……うむ、このコロッケもうまいな」
「エイルさん、荷物が増えましたよ。収納魔法でお願いします」
「はいはい。……まったく、勇者のパーティバッグが『おまけのパン』で埋まるとは」
エイルも文句を言いながら、口元にはもらった揚げパンの砂糖がついていた。
そして、極めつけは――。
「ブモォォォ!(うめぇぇぇ!)」
「ひぃっ!? ま、魔物!?」
市場の人々が、大量の食材を抱えたミノタウロス(ゴズ)を見て悲鳴を上げる。
しかし、ヒナタがすかさずフォローに入った。
「大丈夫ですよ! ゴズさんは僕の『荷物持ち係』ですから!」
「ほらゴズさん、お店の人に『ごちそうさま』は?」
「ブ、ブモッ!(ごっそさん!)」
ゴズがペコリと頭を下げる。
それを見た街の人々は、再び戦慄(と勘違い)した。
「み、見たか……? あの凶暴なミノタウロスが、頭を下げたぞ……」
「勇者様、魔獣使い(テイマー)としても超一流なのか……」
「あんな化け物を『荷物持ち』にするなんて、どれだけ格が違うんだ……!」
【街の評価】
勇者ヒナタ: めっちゃいい人。そして底知れない実力者。
一行の評判: 最高(美味しいものをくれるから)。
【場所:天界・管理室】
『ちがーう!!』
神ドラマスがモニターにツッコミを入れる。
『なんで「食レポ」してんだよ! 武器屋に行けよ! 防具を新調しろよ!』
『なんでインベントリ(アイテム袋)が、ポーションじゃなくて「揚げパン」と「トマト」で埋まってるんだよォォッ!!』
ドラマスは頭を抱えた。
勇者一行は、市場の活気に飲み込まれ、完全に「観光モード」だ。
しかも、ヒナタの一言が決定打となった。
「あ、ポスターがありますよ」
ヒナタが掲示板を指差す。
【明日開催! ポルト名物・大食い&美食祭り!】
「……明日?」
ヒナタと、ヴァレリアと、エイルと、ゴズと、そしてセバスチャンの目が光った。
「宰相さん。船の手配って、時間かかりますよね?」
ヒナタが上目遣いで尋ねる。
セバスチャンは一瞬葛藤したが、手に持っていた「焼きトウモロコシ」の誘惑には勝てなかった。
「……そ、そうですな。大型船のチャーターには、手続きに数日かかると聞きます(嘘)」
「よし! 決まりですね!」
ヒナタが満面の笑みで宣言した。
「今日はこの街を食べ尽くしましょう!」
『行けよォォォォッ!! 船なら港に停まってるだろォォォッ!!』
神様の叫びも虚しく、勇者一行は「祭りへの参加」を決定。
滞在期間が「+3日」延長された。
(第8話・完)
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ヒナタのマイペースな異世界蹂躙はまだまだ続きます。魔王軍の胃の痛みが限界を迎える前に、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】からの評価や、ブックマークでの応援をよろしくお願いいたします!
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